[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


 長野市に内科医院が開かれました。開院前に内覧会があったので見学させていただきました。
 院長先生から直接お話を伺うことができました。「『患者さま』ではなく『患者さん』と取り組みたいのです」と。
 このお言葉には、長い間医療に従事してこられた院長先生の、深い願いが込められていると私には感じられました。

 ビジネス縁起観の「原因・条件・結果・影響の原理」で考えてみましょう。
 患者を「原因」と置けば、医師・看護師は「条件」になります。医療・看護の効果が「結果」であり、そこから生み出される生活・人生が「影響」です。より意義のある生活・人生を支えるための医療・看護なのです。

 「条件」たる医師・看護師が誠意を込めて取り組んでも「原因」たる患者の姿勢・態度によって効果に違いが出ます。
 自分の病気の症状に苦しんでいても、どんな病気なのか、どのように取り組めばいいのかを考えず、医師・看護師に治してくれと言うだけのAさん。
 自分の病気の症状に苦しむのは同じでもどんな病気なのかを知り、どのように取り組めばいいのかを学び、医師・看護師を信頼しながら自分でも努力しているBさん。 医師・看護師という「条件」は同じでもAさんとBさんとでは「原因」が明らかに異なります。このため「結果」としての医療・看護の効果には違いが出てくるでしょう。それはそのままAさんの生活・人生、Bさんの生活・人生の違いとして現れるにちがいありません。

 患者の皆さんがBさんの姿勢であって欲しい。Aさんの姿勢の患者さんでもBさんの姿勢になって病気と取り組んで欲しい。 院長先生のそのようなお気持ちが、医院の設計や調度の工夫として現れていると思われ、私は深い感動を覚えました。

 「原因」となる側の人と「条件」となる側の人が、それぞれどのような内容を持ちどのような関係を結ぶかによって、その後の展開が変わります。
 「患者さん」の内面に目を向け、より意義の大きい医療を目指す情熱に触れて、とても嬉しい気持ちになりました。 (浪)
☆「詩人散歩」平成19年夏号に掲載