[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◆会社を作りたい

 会社を作りたいと念願する人がいる。会社を作るとはどういうことなのか、そこには極楽もあれば地獄もある、そういうことを理解しているのか。
 会社をつくるのは、何かをして、何かを得るためであろう。自分が得ようとしているもののために会社を作るのだから、これは手段である。会社を作らなくても欲しいものが得られるのなら作らなくてもいい。 会社を作ったほうが、欲しいものを得やすいから会社を作るのだ。このことを明確にしておく必要がある。

◆経営の苦労

 会社を作って経営者になると、今度は新たな苦労が待っている。
 会社経営は、綱渡りの綱の上に立っているようなものである。一刻の油断もならない。安定しているようにみえても、ちょっとした風でぐらついて、バランスを失えば落下してしまう。
 会社経営は、泥沼を歩くようなものである。足元も見えない所を一歩一歩まさぐりながら行かなければならない。転んで泥だらけになることもあれば、自力では起き上がれなくなってしまうこともある。
 そんな苦労をしてでも会社を作りたいと思うのは、会社だからこそできることがあるからであろう。そのことをしっかり見つめて、取り組むことが肝要である。
 毎日の苦労に目を回したり、気に入らないことに腹を立てたり、思うように行かないからといって、いちいち愚痴をこぼしているようでは、まだまだ経営者になる資格はない。

◆本当の目的

 会社を作るのは何かを得たいからだ。
 では、自分は何を得たいから会社を作るのか。利益を得たいのか、得た利益をどうするのか。蓄えておくのか。蓄えができたらどうするのか。もっと会社を大きくするのか。大きくなった会社で何をして、何を得ようというのか。
 こんな堂々巡りはやめて、もう一つ奥にあるはずの、本当の目的を見つけ出したほうがいい。
 本当の目的は、自分の生きざまの中にある。自分の生きざまを自覚して、本当に求めているもののために会社を作り、経営をする。そうすれば苦労も苦労でなくなるだろう。(浪 宏友)
☆「詩人散歩」平成19年冬号に掲載