[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◆知識倒れ

 自分が知っていることを他人が知らない。そういうときにやたらと威張る人がいます。逆に自分の知らないことを他人が知っていると腹を立てたりしています。見ていると滑稽です。底の浅い人格が透けて見えます。
 知識は多いほうが良いことは当然ですが、知識が豊かだからといって誇れるものでもありません。
医者の不養生、紺屋の白袴、坊主の不信心、儒者の不身持ち。いろいろなことを知っていて、他人にはあれこれ言うけれど自分の始末はなってない。これでは、何にもなりません。こんなのを、知識倒れとでも言うのでしょうか。

◆しっているを、しているへ

 公共広告機構が「しっているを、しているへ」と呼びかけています。私たちは何をしなければならないかを知っている。けれども実際にしているだろうか。していないのではないか。問題は差し迫っている。「しっているだけじゃ、もう、すまされない」と重ねて訴えかけています。
 公共広告機構が訴えているのは地球温暖化の問題ですが、それに限らず「知っている、分かっている」けれども「やらない、やろうとしない」ことが、あまりにも多いのかもしれません。

◆知識から智慧へ

 「知識」は知っていることであり、知っているだけです。「智慧」は、知っていることによって正しい判断が出来て正しい行動ができることです。
 仏教で言う智慧にはもっと深遠な意味と内容が込められているようですが、私にはそうした難しいことは分かりません。
 ただ、仏教を通して学んだことを、実行することが大切なのだということは、師匠や先達からくれぐれも戒められています。
 正しい知識は正しい行動を生み出すために必要なものです。私は人生の極意を「今、成すべきことを成す」であると考え、実行しようと努力しています。なかなか、合格点は付けられませんが、方向性だけは失わないように努めています。

◆知る努力・行う努力

 こうして私たちは、知る努力と行う努力が求められていることに気付きます。
 知っているだけでは駄目。知らずに行っているのは危険極まりない。
 正しく知って、正しく判断し、正しく行うことによって求めるものが得られるのです。経営もビジネスも、例外ではありますまい。 知識から智慧へ。
 私自身を戒めるとともに皆さまにもお薦めしたいと心から思います。(浪 宏友)
☆「詩人散歩」平成20年夏号に掲載