[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇世界的な規模で不景気の嵐が吹き荒れています。だからウチの会社が奇怪しくなった。まだ不景気は底を打っていないらしい。かなり長引きそうだ。もう駄目かもしれない。そんな嘆きが、町のそちこちから聞こえてきます。

◇とにかく借金をして、切り抜けなければならない。そう考えて金融機関に走っても、簡単には貸してくれません。不良債権候補と見なされたら、断られてしまいます。政府が慌ただしく準備した中小企業向けの緊急融資にしがみついてなんとか当面の資金繰りはついても、いつまで持つか分かりません。

◇少々不景気が続いても、借金をすれば切り抜けられる。持ち直すことができる。そういう企業は、それなりの体質を備えているに違いありません。脆弱な体質の企業は、一時しのぎをしても不景気がちょっと長引けば持ちこたえられないでしょう。まして、すでに破綻状態になっていれば、少しの借金など焼け石に水にちがいありません。

◇長い歴史を見ても、景気が変動するのは避けられないことです。景気変動の影響を受けずに経営することはまず不可能です。治に居て乱を忘れず。景気が良いとき、業績が上向いているときに、不景気に備えて準備をしておくのが経営の常道でしょう。これを怠ったがために、不景気になったらたちまち傾いてしまうのだとしたら、いったい、これまでの経営はなんだったのでしょうか。

◇避けようのない事態が目の前にくると、たちまち経営が揺らいでしまう。それから慌てふためき、愚痴を並べ立てる。打てる手は、従業員を解雇することと借金すること。それ以外は何も思い浮かばない。これでは対処とは言えません。ただ、振り回されているだけです。こんなことをしていれば、社員からの信頼を失い、世間からも冷たく扱われ、しまいには家族からさえ疎んじられてしまいます。

◇景気がもちなおしたとき、会社は存続していた。やれやれと思ったら仕事ができる状態ではなくなっていた。そうこうしているうちに他の会社に仕事を奪われ、今度こそ倒産してしまった。こんなことにならないためにも、正しい取り組みをしたいものだと思います。

◇不景気がきてしまっている昨今、とにかく対処しなければなりません。解雇と借金以外にもやるべきことはあるはずです。こんなときだからこそ、経営者が正しいリーダーシップを発揮して、皆の力を結集しなければならないのではないでしょうか。     (浪)
☆「詩人散歩」平成21年春号に掲載