[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇社員教育にかけるお金を惜しむ経営者がいます。お酒やゴルフにかける多額なお金はちっとも惜しくないのですが、社員教育にかける僅かなお金は惜しいのです。お酒やゴルフは経営発展に役立つけれども、社員教育は役立たないと思っているのでしょうか。

◇社員教育は役立たないと思っているとしたらあるいは、これまでに行ってきた社員教育が、役立たなかったのかもしれません。
 新入社員をベテラン社員に教えさせたら、ほどなく辞めてしまった。
 外部の研修を受けさせたら、生意気になって帰ってきただけで、何の効果もなかった。
 コンサルタントを入れて見たら、一応それなりの効果があった。ところが、契約が終了してコンサルタントがいなくなったら、あっと言う間に元の木阿弥だ。
 こんな繰り返しがあったのかもしれません。

◇社員を真に成長させる社員教育というものはあり得ないのでしょうか。そんなはずはありません。立派に成果をあげている事例も少なからずあるのです。
 しかしながら、そのためにはいくつかの条件があります。それらの条件が揃いさえすれば、社員を成長させることは可能であると私は思っています。

◇正しい社員教育の条件に言及するスペースはここではありません。ただ、経営者自身が社員教育の先頭に立つことが第一条件であることは間違いありません。
 だれかに社員教育をやらせて、自分は出来上がった社員を使うだけというような態度では、結局何も得られないと思います。社長自身が自ら健康な汗を流してこそ、真に役立つ社員を育てることができると、私は信じています。

◇社長が先頭に立つといっても、社長の根本姿勢が整っていなければ何にもなりません。
 社員というものは、社長である自分の言うことを鵜呑みにして、その通りにものを考え、ものを言い、行動すればいいんだ。
 このように思っている社長には、社長の言うことにいちいち質問する社員は、煩わしい存在でしょう。反対意見を言う社員なんか、もっての外でしょう。悩みを持って相談にくる社員ですら、面倒くさいかもしれません。
 このような場面は、社員教育の絶好の機会なのです。折角の機会を正しく生かすことができない会社であれば、社員教育は不可能に近いかもしれません。

◇社員を成長させる社員教育は、正しい条件と筋道と、社長の粘り強い努力によって実現するのではないでしょうか。 (浪)
☆「詩人散歩」平成21年秋号に掲載