[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇「もしドラ」
 最近「もしドラ」という言葉が飛び交っています。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という長い題名の本のことです。岩崎夏海さんの著作でダイヤモンド社から出版されています。
 私も『マネジメント』(P・F・ドラッカー著、上田惇生編訳、ダイヤモンド社)に目を通しましたが、こちらも売れている本で、多くの人びとが愛読していると聞いています。

◇同意
 この本の第三章「仕事と人間」で、人が意欲的に働く条件について語った後、ドラッカーはこんなことを言っています。
「事実、これらのことを知ったマネジメントはすべて同意の相槌を打ってきた。しかるに、実際に行動に移したマネジメントはそれほど多くない」
 この素晴らしい本を読み終わって“まったくだ、ドラッカーの言う通りだ”とうなずきながら本を閉じ、実際の場面ではドラッカーの言葉など忘れ果てて、違うことをやっているというのでは、著者は満足できないでしょう。

◇私の経験
 似たようなことは、私も経営コンサルタントの立場で経験しています。私の話を聞いて、なるほどその通りだと感動してくださりながら、これまで続けてきた自分のやり方を変えることはしないのです。
 なかには、一回だけ実践して成果を手にしても、二度は行なわないという方もいらっしゃいます。続けて行なえば、続けて成果が得られるのですけれども、今までの自分のやり方に引きずられてしまうのかもしれません。

◇実践
 良いと分かったら実践していただきたいのです。実践すれば、成果が出ます。実践しなければ成果を得ることができません。
 自分が実践できなかったのには、こんな訳があったのだと、縷々説明してくださる方も少なくありません。事情はあったのでしょうけれども、実践しなかったために成果を得られなかったという事実は、変えようがありません。

◇破綻の日
 正しい道を学び、正しい道に踏み出す。これは、意外に難しいものです。どうしても自分につまずくのです。しかし、「自分にはとてもできない」とか「こんな状態ではそれどころじゃないよ」などと言いながら、誤りを続けていれば、やがて破綻の日が訪れるのです。

◇自分との闘い
 正しい道を学んで、正しい道を歩む。困難でも、そうした努力を続ける。これは自分との闘いです。誤った道に入ろうとする自分との壮絶な闘いです。そして、正しい道を歩みきった時自分に勝ったと言えるのだと思います。折角、正しい道を学んだのなら、これを実践するために、自分との闘いに入っていただきたいと思います。厳しい闘いに打ち勝って、堂々と成果を手にしていただきたいと思います。(浪)
☆「詩人散歩」平成23年春号に掲載