◇質問
「人の悪いところを見てはいけないんですよね」 私にそう質問した人がいました。私は「そうではないと思います」と答えました。
一見、立派そうに見えるこの教えには、誤りがあると思うからです。
この教えを守ろうとして、相手の悪いところから目を背けようとしても、現に相手が悪いところを出していれば見えてしまいます。
人によっては「相手の悪いところが見えるのは自分がもっと悪いからだ」などと自虐的な考えを持つようになったりして、自分を損なってしまうこともあるのです。
◇原理の示すもの
ビジネス縁起観の「原因・条件・結果・影響の原理」は、現実を直視し、現実に応じて正しく対応せよと語ります。
現実を直視しますと、相手の良いところを見ると同時に悪いところも見ることになります。
相手の良いところが見えたら、ああ、この人にはこういう良いところがあるなと受け止めて、正しく対応します。
相手の悪いところが見えたら、ああ、この人にはこういう悪いところがあるなと受け止めて正しく対応します。
「正しい対応」とは「自分にも、相手にも、世間にも良いという基準に合った対応」と、ビジネス縁起観では定義づけています。
◇次善の教え
それでも「相手の悪いところを見ないようにしなさい」と言いたくなることもあるのです。
相手の悪いところに引っ掛かって、愚痴ばかり言っている人がいます。
相手の悪いところを見つけると、すぐに怒りだす人がいます。
相手の悪いところをほじくりだして、非難したり、文句を言ったりして相手の人格を否定する人もいます。
そんなふうに相手の悪いところに引っ掛かって自分を乱したり、人間関係を乱したりする人がいるものですから「相手の悪いところを見るな」と言ったのかもしれません。いわば次善の教えなのだと思います。
◇良いところ探し
「良いところを探しなさい」という教えがあります。これは、正しい教えだと思います。
「良いところ」というと、難しく考える人がいますが「自分のするべきことをするところ」「人の役に立つところ」などが、良いところだと考えればいいと思います。
そうした中で、悪いところが見えたら、惜しいなと思い、かわいそうだな思ってあげたいと思います。その悪いところにどう対応するかは、自分と相手の関係や、自分の力量によって、無理のない対処法を考えればいいのだと思います。(浪)
☆「詩人散歩」平成24年冬号に掲載