[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇商店主
 ある商店主が、なぜ店が流行らないんだろうと友人に相談しました。友人は話を聞いて、そりゃあ、お前のやり方が間違っているんだよと言いました。商店主は、怒りだしました。俺はちゃんとやってきた。間違ってなんかいない。そう言って帰ってしまいました。それからも必死で商いを続けましたが、どうしても上向きにはならず、だんだんしぼんでいくのでした。
◇面倒
 自分はこんなにあんたの面倒を見てきたと言いながら、そのあんたにすっかり嫌われている人がいました。面倒を見れば見るほど、迷惑がられていましたが、本人はそのことに気づいていませんでした。
◇子育て
 一生懸命に子育てをしてきた親が、だらしない子供に向かって言いました。そんなお前に育てたつもりはない、と。しかし、そんな子供に育っているのは事実でした。
◇頑張った
 母一人、息子一人の家庭がありました。母親はこの子のため、この子のためと必死で頑張ってきました。ところが長じるにつれて子供はどんどん不幸になっていきました。母親は、身を削って子供のため、子供のためと尽力するのですが、子供が立ち直ることはありませんでした。
 子供のほうでも、自分なりに頑張っていたのですが、いくら頑張っても、いや、頑張れば頑張るほど、不幸が深まっていくのでした。 ◇息子たち
 若いころから頑張って、立派な業績を残した男がいました。三人の息子たちも立派に育ち、何の心配もなくなりました。息子たちは父親に引退を勧め、立派な家を建てて住まわせました。そのころから衰えはじめた父親を巡って、息子たちは、ああしてあげたほうが良い、こうしてあげたほうが良いと議論しました。やがて父親はすっかり耄碌して他界しました。葬儀も終えて、兄弟たちが集まり、父親の話をしていたとき、一人が言いました。ところで親父は俺たちに何をしてもらいたかったんだろう。
◇情けない
 私たちは、自分は良いことをしている、正しいことをしている、どこも間違ってはいないと思い込むところがあります。それなのに良い結果が出なかったり、悪い結果が出てしまうことがしばしばです。なぜ、こんなことになるのでしょうか。 自分のしたことと出ている結果との関係も分からずに、そんなはずではなかったと騒いでいる自分に気付いたら、どこか、情けない感じがしないでしょうか。
(浪)
☆「詩人散歩」平成25年夏号に掲載