[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇科学
 科学の定義は「ことがらの間に客観的なきまりや原理を発見し、それらを体系化し、説明する営み」とされています。科学が明らかにしたきまりや原理を「法則」と呼ぶことにします。
 科学が見出した法則を活用して、新たな技術が開発され、私たちの生活を便利にしたり、産業を進歩させたりしてくれています。

◇法則の下敷き
 私も、物理学を齧(かじ)った者として、科学には興味を持ち、科学が見出す数々の法則を雑学的に学んだりしてきました。
 これらの法則を検討すると、ひとつの原理のもとに成り立っていることが分かります。この原理を下敷きにして法則を学ぶと、法則のポイントが理解しやすくなります。

◇原理
 原理の第一は、「ものごとにはおおもとの原因がある」ということです。原因なしには何ごとも起きません。
 原理の第二は、「ものごとが起きるには条件が必要である」ということです。原因だけでは何ごとも起きません。なんらかの条件があって、ものごとが起きるのです。
 原理の第三は、「原因と条件が触れ合うと、ものごとが起きる」ということです。このものごとを結果と呼びます。
 原理の第四は、「結果はあとあとに影響を残す」ということです。結果は新たな原因となりあるいは新たな条件となって、次の結果を起こします。このことを影響と言っているのです。
 この原理を私は「原因・条件・結果・影響の原理」と呼んでいます。

◇火が燃える
 燃えるものを原因とすれば、熱と空気(酸素)が条件となって、火が燃えるという結果が生じます。燃え出した火が新たな原因となりあるいは条件となって、私たちの生活に役に立ったり、災害を起したりという影響を残します。

◇二千五百年前から
 原因・条件・結果・影響の原理は、二千五百年ほど以前にインドで発見され、「縁起の法」と呼ばれました。縁起の法はある人々によって現実に使われてきました。現代風に言えば、問題解決、企画立案、人材育成、人間関係などにこの原理を適用して、生活はもちろん経営・管理・業務にも、国の政治にも多くの成果を上げて来ました。
 この原理を発見した人は釈迦牟尼世尊であり、この原理を使って成果を上げてきた人々は仏教徒たちの一部です。
 いつしかこの原理が見失われてしまったのは、仏教が宗教になったために、法則から目が離れてしまったからではないかと私は考えています。(浪)
☆「詩人散歩」平成25年秋号に掲載