[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇スキル
 スキルというのは、自分が受け持った仕事をするために役立つ能力のことです。どんなに優れた能力をもっていたとしても、受け持った仕事に役立たない能力はスキルではありません。

◇ハードスキル
 スキルの中でも、仕事に密着し専門性をもったスキルをハードスキルと言います。
 私が最初に配属された仕事は、ビルの電気設備管理でした。私は先輩から勧められるまま、電気工事士や電気主任技術者の資格を取得したり、変圧器・電動機などの電気設備について学んだり、電気設備のコントロールシステムについて、知識・技術・技能を体得したりしました。これらはすべて、ハードスキルでした。
 仕事が変わって、教育関係の研究所に配属されたとき、電気関係のスキルは役に立たなくなり、新たに教育関係の知識・技術・技能を学ばなければなりませんでした。仕事が変わると、必要なハードスキルは変わってしまうのです。

◇ソフトスキル
 私が電気設備管理技術者をしている間に、論理力、企画力、問題解決力、折衝能力などが身につきました。これらの能力は教育関係の研究所の仕事にも大いに役立ちました。
 私はその後、学術関係の研究所、舞台のディレクターなどに配属され、ハードスキルは次々と変わっていきましたが、論理力、企画力、問題解決力、折衝能力などはいつも役に立ちました。
 このように、仕事が変わっても役立ち続けるスキルがいくつもあって、これらをソフトスキルと言います。
 ソフトスキルが身についていた私は、新たなことにも前向きに取り組み、自分のものにすることができました。また、困難な事態に遭遇しても落ち着いて対処することができました。

◇ソフトスキルの無い人たち
 私の周りには、定型的な業務は上手にできるけれども、状況が変わると何もできない人たちが大勢いました。ハードスキルはあるけれども、ソフトスキルがない人たちです。
 このような人たちがほかの職場に配属されるとその職場における定型的な業務を教わって、それを行なうしかないようでした。

◇ソフトスキルと仏教
 私がソフトスキルを身につけることができた大きな要因は、父母から仏教を勧められたところにあると思います。仏教はソフトスキルを説いているからです。その根本は存在の法則といわれる縁起の法です。現代社会で役立つソフトスキルの中でも特に重要なソフトスキルが、縁起の法によって導き出されます。
 その意味でも、仏教に縁付けてくれた両親に、深く感謝しています。(浪)
☆「詩人散歩」平成25年冬号に掲載