[ビジネス縁起観からのメッセージ]        浪 宏友


◇新しがるな
 ある団体でイベントを実施することになり、若者たちが企画を立てることになりました。張り切った若者たちは、新しい知識や技術を持ち込んだ企画を立案しました。
 この企画を知らされた年長の男性が乗り込んできて、若者たちを前に怒鳴り散らしました。新しがらないで今までどおりにやれというのす。若者たちがどう説明しても、聞く耳を持ちません。
 若者たちは、やむなく前例の通りに企画を作り直しました。釈然としないまま、どこか投げやりな気持ちで、イベントを終えました。若者たちに充実感はありませんでした。

◇見習ったらどうだ
 後日、この年長者が他の団体のイベントに招かれました。帰ってきてから、若者たちの前で、あれは良かった、お前たちも少しは見習ったらどうだと自慢げに話します。その内容を聞いてみれば若者たちがやろうとしていたそのことだったのです。若者たちは、すっかり白けてしまいました。

◇理解できない
 この年長者が、若者たちの企画に猛反対した理由は、新しい知識・新しい技術を理解できなかったからなのです。その知識・技術を用いれば、どのような効果が生み出せるのかをイメージできなかったからなのです。
 ある種の人にとっては、自分より目下の者が、自分の知らないことを知っていたり、自分のできないことができたりすることは、実に我慢のならないことのようです。

◇俺にはわからん
 この年長者をイベントに招いた団体では、こんな経緯がありました。
 上に立つ人が若者たちの立てた企画を見て言ったのです。こんな新しいことは俺にはわからん。おまえたちがこれでいいんならやって見ろ。責任は俺が持つ、と。
 若者たちは、自分たちの立てた企画ですから、懸命にイベントに取り組みました。新しいことで迷ったり、つまづいたりもしましたが、なんとかかんとかやり遂げました。
 上に立つ人は、良くやったと若者たちをねぎらいました。

  ◇繰り返し
 新しいことを示されて「俺にはわからん」と若者たちに任せた人は、若者たちから尊敬され、慕われました。
 新しいことが理解できずに、頭からはねつけた年長の男性は、若者たちから軽蔑され、嫌われました。それでも、繰り返し、繰り返し、新しいことをはねつけ続けるのでした。(浪)

☆「詩人散歩」平成29年夏号に掲載