[ビジネス縁起観からのメッセージ]      浪 宏友


 「自己実現」という言葉があります。もとは、心理学で使われていた言葉らしいのですが、現在はビジネスの世界でも使われています。
 「自己実現」という言葉は、実にさまざまに語られています。すべてを上げることはできませんので、いくつか見てみたいと思います。

 ある人は、人並み外れた高い業績を上げることが自己実現だと考えているようです。この考え方ですと、オリンピックのメダリストたちは自己実現をしたアスリートたちです。
 ノーベル賞を授与された人たちも自己実現した人たちです。
 この考えでは、自己実現できるのは一握りの人々に限られることになりそうです。

 ある人は、自己実現とは、自分のしたいことをすることだと考えているようです。
 こういう考えの人が会社に入りますと、自分のしたいことを会社はさせてくれないという現実にぶつかります。すると、不平不満を抱いたり、そのために退職したりすることもあるようです。

 自分の目的を実現するために努力し、成し遂げることが自己実現であるとする人もいます。努力をしない、努力しても成し遂げられないときは、自己実現はできないことになります。

 自分に内在している能力を最大限に発揮し、具体的な成果を生み出すことが自己実現だと考える人もいるようです。
 自分の持つ能力の一部しか発揮できない人、成果と言えるような成果を生み出せない人は、自己実現はできないということになります。

 自分が成長することが自己実現だと考えている人もいるようです。去年よりは今年、今年よりは来年と、自分が成長していることを認識し、実感することができれば、自己実現しているということになるのでしょうか。

 自分が生きがいを得ることが、自己実現をすることだと考えている人もいるようです。生きがいとは、この場合、生きていることに喜びを感じることでしょうか。
 自分は何のために生きているのだろうなどと愚痴っている人は、自己実現はできないわけです。

 私は、どんな人でも、その気になればできる自己実現があるのではないかと思いました。
 そして「自分の意思で、自分の能力で、人さまのお役に立つこと」が、自己実現であると考えるようになりました。

 こんな私でも、だれかのために、ほんの少しだけお役に立つことならできる。それが、自分を実現しているということになるのではないか。そんなふうに考えたからです。(浪)

☆「詩人散歩」平成30年夏号に掲載