[ビジネス縁起観からのメッセージ]      浪 宏友


◇三毒
 仏教では、「貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・愚痴(ぐち)」を、「三毒」と呼んでいます。自分を害 する三種の毒です。
「貪欲」とは「貪り欲する」ことですが、なんでもかんでも自分に都合よくしたいという、自分本位の激しい欲求です。
「瞋恚」とは、自分の思いのままにならないものに対して怒りを発し、憎み、恨むことです。貪欲が満たされないと瞋恚を発するのです。
「愚痴」とは、本当のことが分からず、正しいことわり、すじみちが分からないことです。このため、自分の思い通りになることが正しいことであり、思い通りにならないことは間違っているなどと、本気で考えたりします。

◇怒り
 「瞬間湯沸かし器」とあだ名される女性がいました。少しでも気に入らないことがあると、瞬時に爆発し、怒鳴り散らすのです。
 「地雷」とあだ名される男性がいました。会話をしている最中に、いきなり怒り出すのです。何が気に入らなかったのか、周りの人には見当もつきません。
 いつも不機嫌で、プリプリ、イライラしている人がいました。恐ろしくて、うかつに近寄れません。恐る恐るお茶をすすめると、怒った顔で振り返り、怒った声で返事をしました。自分では普通の挨拶のつもりだったようです。

◇破壊
 怒るとものを壊します。手当たり次第に叩きつけます。大事なものを木端微塵にして、あとで泣いたり、ますます怒ったりします。
 怒りをぶつけて他人を壊します。暴言で他人の心を壊し、暴力で他人の身体を傷つけることもあります。
 怒りによって人間関係を壊します。親しくしていた人までも、だんだん寄りつかなくなります。 怒りまくる人は、すじみちを壊し、秩序を乱します。このため、信用も信頼も失います。
 怒りながら仕事をしても、誰もありがたいとは思いません。成果をあげても、あんまり認めてもらえません。怒りが自分の努力や業績を壊してしまうのです。
 なによりも、怒るたびに自分を壊します。心を壊します。生活を壊します。そして、自分の人生を壊します。

◇毒消し
 瞋恚(怒り)は、三毒のひとつとされていますが、なるほどそうだなと思います。自分の人間性を破壊し、社会性を破壊し、人生を破壊する猛毒と言ってよさそうです。一刻も早く毒消しを服用して、健康に戻りたいものです。
 毒消しの一つは、本誌の「阿含経に学ぶ」に紹介しました中道(八正道)です。 (浪)

☆「詩人散歩」平成30年秋号に掲載