[ビジネス縁起観からのメッセージ]      浪 宏友


 FIDR(ファイダー、公益財団法人国際開発救援財団)から、ファイダーニュース109号をいただきました。その表紙に、11人の男女の姿がありましたが、そのうち10人はカトゥー織を身に着けていました。
 それを見て思い出したのは、2016年(平成28年)にいただいたファイダーニュース94号の表紙です。そこには、カトゥー織を着た1人の女性が満面の笑顔で映っていました。そのときの記事は、次のようなことだったと思います。
 ベトナム中部の都市ダナンの郊外クアンナム省ナムザン郡の山岳地帯に暮らしている少数民族カトゥー族の人々は、ベトナムで進められていた市場経済の波に乗ることができず、貧しい状態が続いていました。この様子を心配したFIDRのスタッフたちは、カトゥー族の伝統的な織物であるカトゥー織を産業とするように勧めました。はじめは半信半疑だったカトゥー族の人々も、カトゥー織が都会の店頭に並んだり、外国人観光客が購入してくれたりすることから自信を持ち、主体的に産業化を進めるようになりました。おおむね、こういうことだったと思います。
 それから四年、今回の表紙には、十人もの男女がカトゥー織に身を包んでいるのです。さっそく、記事に目を通しました。
     リード文に「FIDRのプロジェクト・メンバーはたった数人。その呼びかけで、約4900世帯が動き、230を超える商品が開発されました」とあります。
 また、注記の形で次の記事がありました。「当プロジェクトは、2016年8月から2020年8月まで独立行政法人国際協力機構(JICA)の『草の根技術協力事業』として、『ナムザン郡の少数民族地域における住民主体による地域活性化のための人材育成』という事業名で実施しました」
 どうやら前回の記事が掲載されたころ、新たなプロジェクトが始まっていたようです。そして、このプロジェクトでは数々の成果があったようです。
 カトゥー族の人々が創造性を発揮して、商品開発を活発に行うようになったという成果。
 カトゥー族の、人々や村々の信頼関係が密になり地域のサプライチェーンがしっかりと構成されたという成果。
 さらには、カトゥー族の人々のすがたが、周囲の少数民族の方々にも刺激を及ぼしたという成果。
 このほかにもさまざまな成果が見られますが、私は、最大の成果は次のことだと思います。
 それは、このプロジェクトが始まるずっと以前からFIDRが一貫して取り組んできた、「地域の人たちが主体性を発揮して自分たちの問題と取り組み克服していく」という目的が、形になって現れたということです。この成果が、他の成果を生み出したともいえるのです。ここに私は、大きな讃辞を捧げたいと思います。
 このようなFIDRを応援したいと思われましたら、FIDR事務局(TEL03ー5282ー5211)まで、ご連絡いただければありがたいと思います。(浪)

 ☆「詩人散歩」令和02年冬号に掲載