[ビジネス縁起観からのメッセージ]      浪 宏友


 よく、こんなセリフに出会います。
 「そんな子に育てた覚えはない!」
 その通り、親は、子供をそんなふうに育てるつもりはまったくなかったのです。しかし、目の前にいる子供は、そんなふうに育っているのです。結果が出ている以上、親は、無自覚なうちに、自分の子をそんなふうに育ててしまったのです。無自覚なまま育てたのですから、「そんなふうにに育てた覚えはない」のです。

 いい子に育てたい、立派な人間に育って欲しい、そう思いながら、悪い子に育てたり、人から蔑まれるような人間に育てたりしたら、目も当てられません。しかし、そうなってしまう危険性があることも知っておきたいと思います。

 最近、ある団体が、日本の母親千人に、子供にどう育って欲しいと思っているかを尋ねたところ、トップスリーは次の通りでした。
  思いやりのある子
  コミュニケーションが上手にできる子
  メンタルが強い子
 本当に、この三つを具えた人として育ったならば理想的だと思います。どの道に進んでも、頼りにされるリーダーになれると思います。

 では、こうなってもらうために、どういう育て方をしているのでしょうか。
 「思いやりのある子になりなさい」
 「コミュニケーションが上手にできる子になりなさい」
 「メンタルが強い子になりなさい」
などと言い聞かせるのは、悪くはないと思いますけれども、これだけでは、子供はどうすればいいのか分かりません。
 実は、親の方でも、こう育って欲しいと願いながら、どう育てればいいのかが、分からないので、こう言い聞かせるほか方法がなかったりするのです。
 「思いやりのある子に育って欲しい」と願っている親は、日常的に、人々に思いやりをかけている大人でしょうか。
 「コミュニケーションが上手にできる子に育って欲しい」と願っている親は、いつも子供の話しに耳を傾けて、上手にコミュニケーションをしているでしょうか。
 「メンタルが強い子になって欲しい」と願っている親は、強いメンタルをもって、何があっても感情的にならずに、理性的にものごとに対している大人でしょうか。

 親たちが、それとは、まったく逆のことをやっていたならば、子供は、親が願うようには育たないのです。そして「そんな子に育てた覚えはない!」と言いたくなってしまうのです。
 子供にやって欲しいように、親が行なう。この鉄則を忘れることなく、子育てに励んでいただきたいと心から願うばかりです。(浪 宏友)