◇歯科衛生士さんの言葉
歯科衛生士さんが、私の口の中を見て、「よく磨いてくださってありがとうございます」とおっしゃいました。
私は、あわてて「とんでもない、ありがたいのはこちらです。教えていただきましたので……」と、口ごもりました。
◇チーム
初めてこの歯科で診療していただいたとき、お若い歯科医師の先生が、歯科医師と歯科衛生士と患者のあなたがチームとなって、歯の治療に取り組むのですと、ご説明くださいました。それから、もう二十年以上、チームプレーは続いています。
いちばん怠けもののチームメンバーが、患者である私でした。いくら教えていただいても、正しいブラッシングを行なえません。それでも歯科衛生士さんは、手を替え、品を替えて、丁寧に教えてくださいました。
さすがの私も、いくらか分かってきて、少しずつ良くなってきたようです。ようやく、いただいたご指導を基礎にして磨き方をあれこれ工夫できるようになりました。そんなときに、歯科衛生士さんから「ありがとうございます」と言われたので、戸惑ってしまったのです。
◇八〇二〇
成人の大人の歯は、親知らずを除けば、通常二十八本です。
八十歳になったとき、自分の歯が少なくとも二十本あることが望ましいという話を聞いたことがあります。これを「八〇二〇(はちまるにいまる)」というのだそうです。
私は、若いころから虫歯があり、抜歯したり、冠をかぶせたりしてきました。現在、冠をかぶせたのも入れれば二十五本の歯があります。かろうじて、八〇二〇をクリアしています。
それもこれも、歯科医師の先生と、歯科衛生士さんのご苦労の賜物だと、改めて思わないではいられません。
◇大事なこと
思えば、歯科衛生士さんは、歯磨き落第生の私に粘り強く付き合ってくださったわけです。
そして、ようやくまともに磨けるようになった私に、「教えたとおりに磨いてくれて、綺麗な歯になってくれてありがとう」と、言ってくださったわけです。
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これは、ちょっと、分かるような気がします。教えてもらったことを自分勝手に解釈して、間違ったことをやって、いい結果が出ないと文句を言う人がいる世の中です。
教えた通りに実行して、良い結果を出してくれる人がいるのは、嬉しいことに違いありません。
歯科衛生士さんから、「ありがとうございます」と言っていただいた私は、歯科衛生士さんに、改めてお礼を申し上げました。 (浪 宏友)