[ビジネス縁起観からのメッセージ]      浪 宏友



 お釈迦さまが世に現われる前に、六人の正覚者がいたそうです。その六人の正覚者にお釈迦さまを加えた七人の正覚者を、七仏と言います。この七人の正覚者が揃ってお説きになったとされる教えがあります。
 「すべて悪しきことをなさず、善いことを行ない、自己の心を浄めること、−−−これが諸の仏の教えである」(中村 元訳「ブッダの真理のことば 感興のことば」岩波文庫)
 これを「七仏通戒偈」と言います。

 妙法蓮華経には、十六人の兄弟が、揃って正覚者となられたというお話があります。この正覚者たちは、それぞれ教化する国を受け持ちました。東の国を受け持つ正覚者、東南の国、南の国を受け持つ正覚者などと手分けをして、方角ごとに、その方角の国を担当する正覚者の名前が上げられています。西の国を受け持つ正覚者として阿弥陀さまの名前が上がっています。
 十六番目、すなわち末っ子がお釈迦さまで、娑婆国土を担当することとなりました。それで、私たちは、お釈迦さまの教えを受けているのです。

  お釈迦さまは、仏教の祖であると言われていますが、お釈迦さまご自身は、そうは考えていらっしゃらなかったようです。
 ある経文で、お釈迦さまは、「わたしは過去の正覚者たちのたどった古道を発見した」とおっしゃっり、「わたしもまたこの道をたどる」とおっしゃっておられます。
 お釈迦さまには、多くの正覚者の先輩がおられたわけです。お釈迦さまは、先輩の正覚者たちがたどられた道を、ご自分もたどるとおっしゃっておられるのです。
 そうだとすると、仏教の祖はお釈迦さまではなくて、多くの先輩方の一番初めの方ということになります。先輩方を遡って、また遡って、さらに遡っていけば、一番初めの先輩に辿り着くのでしょうが、それがどれくらい以前の先輩なのか、分かりようもありません。ただ、ものすごく遠い昔であろうと思います。

 お釈迦さまは、縁起の法を悟られて正覚者となられました。縁起の法は、いつでも、どこでも、だれにもあてはまる普遍の真理です。
 お釈迦さまは、智慧によって普遍の真理である縁起の法を悟り、慈悲心によって縁起の法から教えを生み出して人々にお説きになりました。その教えが仏教として、現代にまで伝わってきたのです。

 縁起の法は、普遍の真理ですから、誰でも、修行次第で覚ることができるはずです。それならば、地球上に生きる人々全員が、縁起の法に目ざめ、縁起の法を実践して幸せになることもできるはずです。
 お釈迦さまは、それを願っておられると、仏典に書いてあります。(浪)