【随筆】−「木星」            浪   宏 友


 太陽系には惑星が九つあります。太陽に近い順に,水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星です。
 これらのなかで一番大きい惑星が,木星です。他のすべての惑星を合計したよりも2倍も重いのだそうで,地球の318倍もあるそうです。
 木星には大赤斑があります。木星の大気の渦ですが,地球が二つ楽に入るという巨大なものです。300年以上も前に発見されました。形は変わるようですが,消えたことはないそうです。
 木星は太陽のまわりを11年と9ヶ月ぐらいでひとまわりします。12年にちょっと足りないくらいです。中国ではここから十二支が生まれたのだと聞いています。
 西洋占星術でも,木星の位置には重大な関心を持っているようです。木星はおとめ座,てんびん座,さそり座,いて座と12星座を移っていきます。
 占星術では木星が1年間のイメージを決めるとされているそうです。根拠は知りませんが,広大な天の運行が地上に深く影響するという思想は,スケールが大きくていいなと思います。夜空にひときわ明るく輝く木星は,人々の心をひきつけ,ロマンをかきたてる魅力があります。
 ところで,この木星があったから,人類が発生し進化できたのだと聞いたときは驚きました。これは天文学の方からの話です。
 宇宙にただよう塵が重力に引きつけられて地球に飛び込んできます。このとき空気との摩擦によって燃え上がり,少女たちの願い事をかなえてくれる流れ星となるのですが,ほとんどは空中で燃え尽きてしまいます。なかに大きなものがあって,燃え尽きることなく地上に落ちてくることがあります。それが隕石として採集され,貴重な研究資料となっています。
 太陽系には無数の小惑星が漂っていますがそれが地球に向かって飛んで来ることがあります。6500万年くらい前に直径10キロメートルほどの小惑星が地球に衝突し,これが恐竜絶滅の原因になったという説があります。それほど大きな影響があるわけです。
 もし木星がなかったら、地球に衝突する小惑星はいっきに千倍になっていたという説が出ました。それだけの小惑星が地球に衝突していたら,地球上で生物が進化することはできなかったのだそうです。小惑星の衝突によって地球環境が頻繁にかき乱され,生物は進化する時間を持てなかったというのです。
 ところが地球の外側に巨大な木星がありました。木星の大きな引力が,地球に向かって飛んでくる小惑星を吸いよせてくれたおかげで,地球にぶつかる小惑星の数は激減しました。地球からみれば木星が盾になってくれたようなものです。
 よかったなあと思うと同時に,すごいなあと感心してしまいます。何がすごいのかと聞かれるとちょっと困るのですが,ちゃんと人類が存在し進化できるようにしてくれたことが一番すごいのではないかと思います。
 生命が誕生して進化する。人間が誕生して進化する。そして今も進化を続けている。
 そんな地球を木星が守ってくれているのです。いや,もしかしたらほかの惑星たちも地球を守ってくれているのかもしれません。
 地球が太陽からほどよい遠さのところにあるのも,地球の大きさがちょうどいいのも,生命を支えてくれる水の存在も,他の惑星たちのおかげがあるのかもしれません。
 かけがえのない地球と言いますが,実はかけがえのない太陽系なのかもしれない。そんなふうに思えてくるのです。
 今夜も晴れています。木星が美しく輝くでしょう。女房を誘って,ちょっと散歩もいいかもしれません。(浪)

 出典:炭酸検協会報(平成17年10月号に掲載)