【随筆】−「地球誕生」               浪   宏 友


 137億年。宇宙誕生から今日までの年数だそうです。2003年2月11日、アメリカ航空宇宙局(NASA)が発表しました。NASAが打ち上げたマイクロ波観測衛星WMAPの取得した、1年分のデータを解析した結果から導かれたそうです。
 今後さらに宇宙理論が発展し、さらに観測機器や観測技術が向上すれば、ますます詳しいことが分かってくるのでしょう。
 宇宙誕生から2億年ほどたった頃、最初の星が生まれたと、NASAの観測結果は物語っているようです。
 最初の星は水素とヘリウムでできていました。それしか宇宙になかったからです。それ以来、多くの星が誕生しては終息を迎えましたが、そのプロセスの中で、他の元素も作られました。
 太陽はおおよそ46億年前に誕生したそうですから、宇宙誕生から91億年目ということになります。太陽はこのあと50億年もすると現在のような輝きを失い、やがて終焉を迎えることになります。
 恒星の寿命は、質量の大きいものほど短くて、太陽の10倍くらいの大きさになると1000万年ぐらい、太陽の半分くらいのものは800億年ぐらいの寿命と計算されています。
 太陽が生まれるまでには、数多くの星々が生まれまた寿命を迎えました。中には大爆発を起こして、残骸を宇宙にまき散らした星もありました。そうした残骸を集めて誕生した星がありました。太陽もそのひとつだったのです。
 太陽のまわりに、鉄や岩石でできた惑星が生まれたのも、そうしたいきさつのおかげでした。そうでなければ地球は誕生していません。大宇宙の巨大な営みが、私たちの地球を生み出すための準備をしてくれていたわけです。
 原始太陽の周りを漂っていたガスや岩石が、次第に集まって大きくなり、惑星が形成されました。太陽から遠く離れていた惑星は、鉄や岩石でできた固まりを中心に、ガスや氷の固まりを集めて、巨大な惑星へと成長しました。
 太陽の近くの惑星は、太陽風の影響からか、ガスが吹き飛ばされて、鉄や岩石ばかりが残り、小さな惑星となりました。この中のひとつが地球だったというわけです。
 硬い物同士が激しくぶつかりあいますと熱を発生します。地球誕生のころは、岩石と岩石が猛烈なスピードで衝突しましたから発生する熱も半端じゃありません。生まれたばかりの地球は、衝突熱で溶けていたのではないかと思われます。
 こうしてかなり大きな熱い球に育っていた地球に、やはりかなり大きく育って火星ぐらいの大きさになっていた別の原子惑星が衝突しました。ジャイアントインパクトと呼ばれています。この衝突によって、地球は今の大きさになったのでした。
 このとき地球の周りに飛び散った岩石から月ができました。生まれたばかりの月を地球から見上げると、今よりずっと大きくて、現在のざっと400倍ぐらいの大きさに見えた計算になるそうです。なにしろできたばかりの月は、地球と接するほどの近くを回っていたからです。
 当時の月は地球を10時間ぐらいで回っていました。すると海は5時間に1回の割合で、大潮があった勘定です。月と地球の間に作用する引力も、ものすごく強かったはずですから、潮の干満も1キロメートルもあったかもしれません。
 そうなると、どろどろに溶けていた地球は、月の引力でかき回されていたでしょうし、その後にできた原始の海も、大揺れに揺れたのではないでしょうか。
 生まれたばかりの地球は、想像を絶する荒々しさであったらしく、そんなところから生命が誕生してきたのかと思うと、ただただ驚くほかありません。    (浪)

 出典:炭酸検協会報(平成19年1月号に掲載)