【随筆】−「清涼飲料水」               浪   宏 友


 清涼飲料水が街に溢れています。自動販売機、コンビニエンスストア、スーパー、キオスク、酒屋さん。何時でも、何処でも、欲しいときに、欲しいものが飲めそうな勢いです。
 ジュース、コーラ、コーヒー、紅茶、緑茶、スポーツドリンク、ミネラルウォーターなどなど。種類も大変なものですが、商品名となるとどれだけあるのでしょうか。ものすごいことになりそうです。
 「コーデックス食品添加物一般基準の食品分類システムによる清涼飲料水」という表があります。コーデックス(国際食品規格委員会)が、なんらかの基準で決めた清涼飲料水の定義なのだと思いますが、国際的な立場からこういう取り決めをしていることは、清涼飲料水が、人類に普遍的な飲み物であることを示していると思いました。
 清涼飲料水は、国や地域によってとらえ方が若干異なるようです。全国清涼飲料工業会発行の『清涼飲料の常識』には「欧米では、ソフトドリンク(清涼飲料水)というときには、通常炭酸飲料のことを言うようであり、わが国のように広範にカバーしている例は少ないようである。」とありました。
 一口に清涼飲料水と言っても、それぞれの国の歴史、文化、生活などの違いによって、とらえ方が微妙に異なってくるのは当然のことかもしれません。
 日本では、食品衛生法をおおもととして、通達や指導要領で示された清涼飲料水の定義があるようです。これによりますとお酒は清涼飲料水ではありません。アルコール分1容量パーセント以上を含有する飲料は、清涼飲料水の仲間には入れません。それから、乳も乳製品も入れませんし、乳酸菌飲料も清涼飲料水ではありません。
 逆に、アルコール分が1パーセント未満の場合は清涼飲料水として認めてもらえるわけです。乳成分や乳酸菌などを含む場合でも、その割合が少なければ清涼飲料水の仲間に入れてもらえるのだと思います。
 こうした法律や文化の話はそれとして、私自身の清涼飲料水に対する実感があります。漠然としたこの実感は、子供の頃からの経験の積み重ねによって作られたもののように思われます。私が清涼飲料水という言葉から連想するのは、涼しげで、爽やかで、スッキリしていて、ホッとしたり元気が出たりする、そんな飲み物です。
 『最新ソフトドリンクス』(発行所「株式会社光琳」)は、「一般的には」と断って、「清涼飲料とは清涼感、爽快感を与え、美味しく、ノドのかわきをいやすのに適した飲料で、大多数は甘味と酸味とフレーバー(味や香り等)があり、アルコール飲料を除く飲料をいう」と語り、このあとに法律での定義を紹介しています。この一般的な清涼飲料の考え方は私の実感と共通していると思いました。
 思い出すのは、山の中で飲んだ湧き水です。真夏のある日に歩いたハイキングコースで、汗をかきかき登ってきた身に、澄みきった湧き水の冷たさが体中に染みわたりました。まさに、清涼な飲料でした。これが私の清涼飲料水の原点になっているように思います。
 その後、屋外の仕事で汗をかいているとき出先の人から冷たい飲み物を提供され、ごくごくと飲み干して、美味いなぁと満足したことが何度もあります。
 事務所で業務中、仕事に行き詰まって立ち上がり、自動販売機に百円玉を入れ、缶コーヒーを取り上げて一気に飲み干し「よしっ、もう一息っ」と気合を入れたときの味も良いものでした。
 清涼飲料水は、さまざまなシチュエーションで、しばしば私を元気にしてくれる活性剤になってくれました。
 清涼飲料水が人々からこれだけ求められているのは、人それぞれに、さまざまなシチュエーションで、清涼飲料水から幸福をもらっているからかもしれませんね。   (浪)

 出典:清飲検協会報(平成22年1月号に掲載)