【随筆】*「水《               浪   宏 友


 人間は、水がなければ生きてはいけません人間だけではありません。少なくとも地球上で生きている生物は、動物も椊物も、目に見えない細菌に至るまで、水がなければたちまちまいってしまいます。
 人間の場合、成人男子は体重の約60%を水が占めているそうです。私は体重60kgですから、そのうち40kgは水というわけです。水は1ℓが1kgですから、40kgは40ℓです。500mlのペットボトル80本分の水が、私の体内で活動しているなんて、本当かなあと思ったり、すごいなあと感心したりしてしまいます。
 体の中の水の量が減ってしまったらどうなるのでしょう。ちょっと資料を漁って、雑学的に調べてみました。
 体の中の水が1%失われると喉が乾くのだそうです。私の場合は、体内の水分が40ℓですから1%は0.4ℓ、500mlペットボトル1本弱の水分が体内からなくなると、喉が渇くわけですね。
 体内の水分の2%が失われると、意識がボンヤリするのだそうです。血液も流れにくくなるみたいですね。
 水分の4%が失われると動作が鈊くなるそうです。やたらに眠くなることもあるようです。仕事中にそんなことになったら困っちゃいます。
 6%失われると頭痛がするそうで、これは血液の循環が悪くなるためかもしれません。また体温が上昇したり手足が震えたりといった症状も出てくるとありました。
 8%失われると呼吸困難、10%失われると失神し、20%失われると命が危ない。
 私の場合は、500mlペットボトル16本分の水分が体内から失われたら危ないわけです。まあ、普段の生活でそこまでいくことはないと思いますけれども……。
 それでは逆に、体から外に逃げていく水の量はどのくらいあるのでしょうか。これも資料を探してみました。
 私たちが何もしなくても、体から失われる水分があります。呼吸に含まれて外に出る水分だけでも、一日に300mlになるそうです。また、皮膚の表面から蒸発する水分が、一日に700mlだと言います。
 400ml失われると喉が渇くのですから、これだけで一日2回は喉が渇く勘定です。更に一日に1600mlぐらいの水分が、排泄に伴って出て行くのだそうです。
 私が一日中ごろごろしながら水分を取らなかったとしたら、それだけで6%の水分が失われますから、頭痛がしたり手足が震えたりすることになるのでしょうか。
 ごろごろしていても、これだけの水分が出て行くわけですから、一生懸命に働いている人は、汗だのなんだので多くの水分を失うことになるのでしょう。
 ところで、人間の体内で一日に使用される水の量は、およそ180ℓと言われています。しかし、私は、そんなに沢山の水を飲んでる覚えがありません。いったいこの水はどこから来るのでしょうか。実は、体内でまかなわれていたのです。
 血液の量は、男性の場合は体重の約8%だそうですから、私の場合は4.8ℓぐらいになります。その半分ぐらいが水です。血液は心臓から送り出されて全身を駆けめぐります。心臓から送り出される水分の量が、1日になんと約1万ℓなのだそうです。
 心臓から送り出された血液が体内を循環する途中で腎臓を通過します。このときに水分の多くが濾過されますが、すぐに再吸収されて体内に戻ります。この量が一日に180ℓぐらいあるわけです。
 私たちは、一日に1ℓ半から2ℓぐらいの水分を、小まめにとりなさいと言われます。逆に言えば、その程度の水を外から補給すればいいようになっているわけです。
 私たちの身体は、巧みなシステムを構築して、水を大切に使っているのですね。(浪)

 出典:清飲検協会報(平成22年4月号に掲載)