詩誌「詩人散歩」(平成15年春号)
◆これまでの【鋸Q宏友事務所日誌】を掲載しています。

 有限会社浪 宏友事務所日誌


○月○日

 「助けて欲しい」
 彼の表情はそう訴えていました。しかし私は黙っていました。私のほうから助け船を出す訳にはいかないのです。
 数年前、私にアドバイスを依頼した彼は、実際にアドバイスをするとすぐに逃げ腰になりました。
 彼の得意なせりふがありました。
 「一生懸命にやってきたつもりです」
 「ちゃんとやったつもりです」
 本人が「つもり」でも実際には間違っていたのです。そのために現在悪い結果が出ているのです。そこには歴然とした原因と結果の関係があるのですが、それを認めようとしません。
 そのような精神ですから、ものごとの本質に心が向きません。ただ、表面の出来事に右往左往するばかりです。そのような人に、こちらから手を差し伸べる訳にはいきません。
 正しい経営をするには、理を重んじる人間性が欠かせないことを私に確信させてくれた反面教師でした。
 前向きの姿勢で依頼に来てくれれば、いつでも対応する準備は出来ているのですけれども。

△月△日

 にっちもさっちも行かなくなってから相談に来る人がいます。追い詰められた状態から劇的に救われたいというのがその真情のようです。しかし、そんな魔法は存在しません。
 魔法に見えるものは、たいてい劇薬です。いっときは症状が良くなるように見えるかもしれませんが、かならず副作用があります。今度は副作用と取り組まなければならないのです。
 要するに甘いのです。ものごとは自分に都合のいいほうに動いてくれるものと思う甘さ。誰かがなんとかしてくれると思う依頼心。そのうちなんとかなると高を括る甘さ。そんな甘さがやがてどうにもならない苦境を招いてしまうのです。 正しい法則を学んで、自分のしてきたことと出てきた現象の関係を知る力。今していることと未来に生まれることの関係を正しく見極める力。未来によりよい結果を生み出すための正しい努力から離れない精神力。そのような人格を備えることこそ、何にも増して大切なのではないでしょうか。
                                         (浪 宏友)

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