詩誌「詩人散歩」(平成15年夏号)
◆これまでの【鋸Q宏友事務所日誌】を掲載しています。

 有限会社浪 宏友事務所日誌


○月○日

 同じ職場で、毎日のように繰り返される仕事がある。同じ人が行う決まりきった仕事がある。いわゆるルーチン・ワークである。略してルーチンともいう。
 ルーチンは、はたらく人々の愚痴の材料ともなっている。毎日毎日、同じことばかりやらされて、進歩もなければ発展もないんだから、などと。
 しかしながら、仕事はルーチンが柱となって進展している。ルーチンがしっかりしているから、特別な仕事も設定できる。ルーチンが崩れているときは、仕事が停滞しているときである。
 ルーチンは正常に流れているのが当たり前だ。いわば、空気みたいなものである。空気が汚れていれば健康を害する。ルーチンが滞れば仕事の能率は上がらない。空気がなければ生きていけない。ルーチンが止まれば、仕事は止まる。ルーチンは仕事全体の支えである。
 ルーチンが整っていないときに文句を言う人は多い。一方、ルーチンが整っているときに感謝している人はどれほどいるだろう。
 ルーチンとは、当たり前のことを当たり前にすることと言ってもよい。当たり前のことをいつも当たり前にできる。それがよい仕事であり,独創的な仕事を生み出す基盤なのである。

□月□日

 主婦たち相手の研修会で、ルーチンが家庭生活にもあることに気がついた。主婦たちは、朝から夜までルーチンに追いまくられていた。
 朝、決まった時間に起きて朝食の支度をする。決まった時間にご主人や子供たちを送り出す。その後、掃除、洗濯などに時間を費やし、時間が来れば夕食を作る。サークル活動でも、パートでも、家庭のルーチンを中核にして取り組んでいる。
 それほどまでに苦労している主婦をいらいらさせるのは、自分のルーチンを守らない家族である。起きるべき時間に起きない子供たち。帰るべき時間に帰らないご亭主。そのうえ、自分の都合ばかり言い張って母親の苦労も、妻の心づかいも理解しようとしない。
 聞けば聞くほど苦労の多い主婦たちの話しに、いささか身に覚えのある私には言葉の出ないひとときであった。
                                          (浪 宏友)

☆ホームページ(http://www.h2.dion.ne.jp/~h.nami/)
☆Eメール  (nakagosho@f8.dion.ne.jp)