詩誌「詩人散歩」(平成17年春号)
◆これまでの【鋸Q宏友事務所日誌】を掲載しています。

 有限会社浪 宏友事務所日誌


○月○日

 バブル崩壊、リストラの嵐という社会現象が一段落したとき、日本の伝統的な雇用慣習であった年功賃金、終身雇用が崩壊していた。その後、多様な雇用形態が立ち現れ、若者たちの職業観に大きな影響を与えている。
 年功賃金、終身雇用が崩壊したのは、要するに長期雇用の年長者が、給与に見合う働きをできなくなったということではないだろうか。
 かつての日本では、比較的単純な産業構造のなかで、年功によって実力が向上したのではないか。それゆえ、年功とともに給料が上がるのは当然だったのではないかと推測している。
 ところが産業構造が激変し事情が一変した。パソコン操作に代表される新しい技術に、年長者がついていけない。年功と実力の比例関係が崩壊した。このため年功賃金は合理性を失ってしまった。
 しかし年功があってこその仕事がまったく無くなったわけではないだろう。後進の育成、企業文化の継承・発展、対外的な信用の形成などに関わる仕事の多くは、年功が大きな力となるに違いない。
 そのような仕事に背を向けてきた人は人員整理の対象となっても致し方なかったのかもしれない。逆に、そのような仕事を任せるべき人まで整理してしまったら、その企業は宝を捨ててしまったと知るべきである。

□月□日

 正社員という言葉が無くなるのではないかと感じるのは私だけではあるまい。 正社員だからといってはたらきがいいわけではない。能力さえあれば、パートタイマーでも管理職ができる。複数のパートタイマーを組み合わせれば、新しい社員構成だって考えられる。
 こうしてみると正社員とパートタイマーの間には、本質的な違いは見あたらない。勤務形態、業務形態の違いに過ぎなくなる。こうした中で、身分を感じさせるような呼び名が廃れていくのは当然かもしれない。
 これからは、正社員とパートタイマーではなくて、フルタイマー社員とパートタイマー社員というような概念に置き換わっていくのかもしれない。
 いや、そうした概念さえやがて消えてさらに多様な勤務形態が、当たり前のこととして受け入れられるような社会になるのかもしれない。

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