詩誌「詩人散歩」(平成12年冬号)
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 鋸Q宏友事務所日誌

 私の定年が二十世紀の終わりの月であることに気づいたとき、また悪戯心が沸いてきた。そこで友人たちに、「二十一世紀の初めの日に、何か新しいことを始めたいな」などと、戯れに話していた。友人たちは、「一緒にやろう」などと言ってくれたけれど、具体的な提案はなにひとつなかった。ただの遊び心だったから、当然のことだ。

 さて、いよいよ二十世紀が終わって二十一世紀が始まる段になると、私は「有限会社浪宏友事務所」を開設することになっているではないか。そして、友人たちが応援してくれているではないか。瓢箪(ひょうたん)から駒が出るというがまったくそんな感じである。

 私は若いときから自我心を振り回してきた。ところが、法華経を学び続けるうちに気持ちが変わってきた。久遠実成の仏が私に役割をくれているのだから、その役割を果たすように努力しようと、そんなふうに考えるようになった。ほんの少し自我心がゆるやかになっていた。

 鋸Q宏友事務所が自然に生まれたように思われたとき、これもまた久遠実成の仏が私に指し示してくれた道なのだなと考えた。まだ、具体的には何も動きだしていない事務所だけれど、久遠実成の仏が用意してくたのだから、開業の日を迎えれば自然に動きが始まるのだろうと思っている。私はその日のために、今なすべきことをコツコツとしていればいいのだ、と。

 それにしても、私は事務所を通してなにをすることになるのだろうか。それは私の持ち物によって必然的に方向づけられているような気がする。

 私の持ち物のうちで一番大きなものはなんといっても、庭野日敬師から教えてもらった釈尊の教えである。釈尊の教えは他の先達からも手ほどきをいただいている。けれどもその深みと具体性において、庭野日敬師から教えてもらったものが群を抜いていると私には感じられる。そこで私は、庭野日敬師から教えてもらった釈尊の教えを、時に応じ、場合に応じて説き明かし、伝えていくことを考えたいと思う。

 事務所の仕事が具体的にどのようになるか分からないけれども、その根底には常に庭野日敬師から教えてもらった釈尊の教えが波打っているようにしたい。

 「人材育成コンサルタント」「手作りイベントコンサルタント」などと名付けてこれから営業をしようと思ってはいるけれども、私の本当の売り物がなんであるかだけは、すでにはっきりしているように思われるのである。                            (浪 宏友)