詩誌「詩人散歩」(平成14年夏号)
◆これまでの【鋸Q宏友事務所日誌】を掲載しています。

 鋸Q 宏友事務所日誌

 昨今、さまざまな企業が世間に迷惑をかけている報道が続いています。そこで行なわれていることは,企業経営者が自分の人間性を投げ捨て他の人々の人間性を踏みにじるようなことばかりです。
 理念なき経営といって批判された時代がありましたが,それは現在もなお続いているようです。そればかりか,間違った理念による経営が堂々とまかり通っているようにさえ見受けられます。
 企業の理念とは,その企業の経営者たちの人生観、人間観,社会観の反映でしょう。
 場当たり的な人生観からは,場当たり的な経営しか生まれてこないでしょう。人間の尊厳に気付かない経営者なら,人間性を無視したことを平気でするかもしれません。社会的センスのない経営者なら,社会規範などどこ吹く風という経営をする可能性があります。
 経営者は何を求めて経営をしているのか,それはどのような心から生まれてきたものか,よくよく吟味してもらいたいものと思います。もっとも,自らそのような吟味ができる経営者であれば,多少の間違いはあったとしても,根本的な誤りをすることはなかったでしょう。
 経営資源とは,経営目的を達成するために利用するものとされています。その中に「人間」を数えていることに私は違和感を感じます。どんな人間でも,他の人間を利用していい理由はありません。人間をもののひとつ,マシーンの一部とみなすような思想や,従業員は経営者の都合に合わせていればいいのだというような考え方は,そろそろ投げ捨ててもらいたいものと思います。
 経営者との労働契約に基づいて雇用した従業員といえども人間です。経営者と共に経営資源を活用して,経営目的を追求するのが従業員に課せられた責任と捉えるのが本当ではないでしょうか。
 従業員は経営者のパートナーでなければならないなどと,言葉だけは躍っていますが,本当のところはどうなっているのか,ここにも経営者の人間観の反映がみられます。
 企業経営も人間の営みのひとつです。ほんものの経営をしたければ,自分自身がほんものの人間になるしかありますまい。ほんものの人間になろうと真摯に努力しつつ,経営を通して自分を高め,修正していく謙虚さがあれば,ほんものの経営ができるはずなのです。
                                         (浪 宏友)

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