【表紙の話】
裾花川の岸辺を歩いていましたら、今日もアオサギに出会いました。こちらからはすっかりお馴染という気分なのですが、向こうはそんなことなど何も知らないでしょう。
アオサギのいる範囲はだいたい決まっています。川の中央付近にある、石がごろごろした浅瀬です。この川で、ニジマスなどの魚、沢蟹、蛙などを見たことがあります。石をめくるとけっこう大きな川虫が逃げていったりします。こうしたものがアオサギの狙い目なのでしょう。
アオサギはかなり大きな鳥です。まっすぐ立っている時の背丈は一メートルほどもありましょうか、翼を広げると大人が両手を広げたよりもまだ大きいといいます。そんな大きな鳥だというのに、まるで気づかないことがあります。浅瀬に重なる石にまぎれてすがたが隠れてしまうのです。歩いているとき、目の前から不意に飛び立たれて驚くこともしばしばです。
アオサギはいつも一羽です。川の浅瀬に首を伸ばして立っているアオサギは、いつまでも動こうとしません。微動だにしません。魚を狙っているはずなのですが、まるで沈思黙考しているようです。
あるとき、沈思黙考の状態からいきなり歩きだしました。二歩、三歩も歩いたでしょうか。嘴を川面に突っ込むと、もう魚を咥えていました。早業でした。こんな場面は、まだ二度くらいしか見たことがありません。
今日のアオサギもじっと立ち尽くしています。少し離れたところから、静かにレンズを向けてシャッターを切りました。そのうちの一枚を表紙にさせていただきました。(浪)
【本号投稿者】
櫛田 令子(東京都杉並区)
大戸 恭子(東京都杉並区)
河野 裕子(東京都多摩市)
伊藤 一路(東京都豊島区)
山本ルイ子(東京都豊島区)
中原 道代(長野県長野市)
【奥 付】
詩誌「詩人散歩」平成27年夏号 平成27年6月1日発行(通算第105号)
編集者・浪 宏友
発行者・菊地良輔
発行所・夕焼けクラブ
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