詩誌「詩人散歩」(平成16年夏号)
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  小さな公園                浪 宏友

こんなに汚れた町だけれど
桜はちゃんと咲くんだね
いつだったか 君と出会ったのも
こんな花曇りの午後だった
忘れ去られた小さな公園
こわれて腰掛けられないベンチの傍らで
花びらを肩に受けながら
いつまでも並んで見上げてたっけ

今日はひとりで見上げている
公園はますます古びてしまったし
町はますます汚れていくけれど
桜は今年もきれいだよ
あのとき君が立っていたあたりに
花びらがひっきりなしに散り落ちて
いつまでも いつまでも 散り落ちて

約束してるわけじゃないけれど
今にも君が姿を見せて
笑顔をひとつぼくになげかけて
それから黙って隣に立って
散り舞う花びらを見つめるかもしれない

立ち去ったら
もう来られない小さな公園に
君の香りがたちこめている

  春の夜                  浪 宏友

ぼくの背中に顔を埋めて
君は泣きじゃくっていた
やがてかすかなさよならが聞こえ
小さな足音が遠ざかっていった

あのときぼくは振り返りもせず
点滅する遠い街灯に目をやりながら
足音をどこまでも追いかけていた

春の夜はいつしか更けて
戻って来ないあの夜が
ひっそりと背後に立ち尽くしている

  春                    中原道代

忙しさから一日開放されて
今私は東京行きの新幹線の中
リクライニングシートにゆったりかけて
外の景色を楽しんでいる
山々は新芽でおおわれやわらかな薄緑
さわってみたい春の色
遠くの屋根の上にこいのぼりが元気いっぱい泳いでいる
田植えも間近
高崎は雨 観音様がぼんやりかすんでいる
トランベールをめくっていくと
エッセイ「ありがたきかな」の題字が目にとび込んだ
残雪の岩手山とその里に咲く桜の写真が美しい
世界がどんなに混沌としていても
その中でおだやかに生かされている幸せ
ありがたきかな
「間もなく大宮」のアナウンスで目が覚めた
上野までもうすぐだ

  涅槃会(朝)               中原章予

遠くに救急車の音
み仏に向かい御供養出来る今
ありがたさ うれしさ
み仏様の 開祖様の
み教えをいただき四十年
八十歳を迎える今
此の良き日戒名当番のお役
又尊くありがたく
南無の心深く胸に
朝早く教会に向かう
今救急車にのる人も仏の子
回復を願いつつ
仏に向かう今の幸せ
すべてに感謝しありがとうございます

     この良き法縁に心より感謝し
     尊い法縁を残して下さった主人そして姉に
     深く深く頭が下がります

  節分会                  中原章予

福は内 鬼は外
もう 何年前になるかしら
お父さんが豆をまき
私は笑いながら豆をひろう
お父さん思い切り私に豆を
受ける心は時にはうれしく
時には悲しく
私の心の鬼を追い出して
幸せになってほしいと
仏様 お父さんの願い
いま深く深く心にしみいり
今日一人で豆をまき
一人で豆をひろい 食べる
想いはいつまでも消えることなし
お父さんありがとう
御仏様開祖様
ありがとうございます

  お正月                  山本恵子

夜明けなのに暗い朝
黒い雲白い雲流れ
墓まいり自転車に乗って
ルンルン気分で走った

誰もいない墓地 ワー
早い人ゴミ見えないと
ささやきに驚かされた
光ちゃんお正月で会いにきたよ

月日の流れ早いのね
今年で早や七回忌
父ちゃん母ちゃんいつも話している
ずいぶん遠くなったよね

  自然に生きる               山本恵子

お猿の平成坊や遊んでいると可愛くて
山の木の実葉を食べて
僕達自然で生きている

人間様より働いて自然の世界で生きる
エサがないと人間世界に下りてきて
食物探すんだ

お腹一杯になると仲間のいる山に帰り
申知恵出して遊び回る
木や山を自由に跳べるんだよ