鼓動 浪 宏友 |
ぼくは きみの 耳もとで ぼくのありったけをこめて ささやく
きみは目覚めて
真っ白な静けさの底
きみと ぼくとの かすかなひとときは
やがて夜明けが
ひとつに溶けた きみとぼくの鼓動が
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七輪 中原道代 |
夕方の勝手口 七輪の火が赤々と燃えている 遊び帰りの小さな手をかざす かじかんだ手がほぐれていく 鍋がかけられ 夕げの仕度が始まる 台所に活気がみなぎってきた 七輪の残り火で餅を焼き 豆を煎る 春にはふき味噌の焼ける 香ばしい臭いが漂った 七輪の火は毎日燃えていた 何かのお役に立ちたい いつも思っている ささやかだけど確かな願い 沢山 沢山 お役に立って いつか みんな 土に帰っていく 私も あのなつかしい七輪も
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季節のつぶやき 佐藤恭子 |
笑う人 笑われる人も 笑う人 笑う門には 福来たるかな
一本の
潮騒を
初恋の
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夢の中 山本恵子 |
眠っていたら誰かささやく 顔を見ると亡母だった きれいな着物姿で私にも 着物きなさいという
目がさめたら三時どうして
病気ばかりして不幸かけてごめんなさい
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夕日の浜辺 山本恵子 |
秀叔父二十二歳の若さで 開戦間もなく南海で戦死 「行ってきます。」出船のあいさつ 「もう帰って来なくていいよ」幼い私 今になって「叔父さんごめんね」 日の丸の小旗で見送った幼かった記憶 祖母は時折り「秀やい」と何度も呼んでいた 特に夕日の沈む浜辺は印象的だった がまん強く気丈な祖母 人知れず泣いていた 祖母のつらさに胸痛む私
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