残り香 浪 宏友 |
せわしなく生きてきたけれど あのとき枯れ野に咲いていた名も無き花が 胸の奥の一輪挿しに今も香りをただよわせている
うたかたの日々
叫んでいたのは 誰
今は静まり返っている空気の底に
再びは訪れぬ日々
聞こえない会話
時が止まり
もう見ることのできない花の残り香が
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足音 中原道代 |
夕暮れの河川敷を二人で歩く ひんやりした風が心地いい 太陽が雲を染めて沈んでいく 河原に紅葉が始まっていた 四方に山々が連なり 足元を犀川が悠々と流れている グランドに響く若者の声 マレットゴルフの槌の音と歓声 活動的な営みが広がっていた 石ころの道を通り抜け やわらかな草の道を楽しむ いつの間にか人の気配は消えていた 山も川も草も灰色のベールにおおわれていく 二人は巨大な墨絵の中を歩いている 重なった足音だけがはっきりと聞こえていた
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晩秋の手紙 中原章予 |
朝夕はすっきり涼しさと言うよりも 寒ささえ感じられます 其の後もお変わり御座いませんか 永い日雨が降らずに外はカラッカラ ウンザリして居ましたが 昨夜は恵みの雨 ベッドの中でききながら休みました 明けて畑や花壇の花 エサをあさって居るスズメ迄が 何となく生き返った様でした 私のフジダナは今でもハトが来て 中をうかがって居ります きっとまた 巣ごもりするのでせう ハトが来ると 何となく楽しく幸せを感じます おかげ様でウルオイのある人生です フジダナをながめて今年もおわるのでせうか 寒さに向かう居り柄 呉々も 御身大切に
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季節のつぶやき 大戸恭子 |
初しもに 足音させて 通う道 寒さ忘れて はく息白く
後足で
冬の日の
ミルクティー
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