詩誌「詩人散歩」(平成19年春号)
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  赤信号                  浪 宏友

君の姿が見えた
走り寄ろうとしたが
信号が赤だ
君は大通りの向こうを歩いていたのだ
大声を上げて呼んでみたけれど
行き交う自動車に掻き消されてしまった

君は歩いて行ってしまう
早く 早く 追いつきたい
けれども 信号はまだ赤だ
君は軽やかに歩いている
大通りを突っ切って行きたいけれど
幻の自動車が行き交うので踏み出すことができない

君の姿が小さくなっていく
気ばかり急いて無意識に足踏みをしていても
信号は 依然として赤だ
あやうく君の姿を見失いそうになる
右を見ても 左を見ても
歩道橋もなければ 他の横断歩道も見当たらない

夕霞の中に君が消えていく
悲しみがこみあげてきても
信号は まだ赤だ
君が見えなくなったあたりに目を凝らしながら
体中が涙でいっぱいになる
それでも君の姿を求めて
大通りを前に立ち尽くしている

  初日の出                 中原道代

元旦の朝
私は橋の上で日の出を待っていた
あたりはまだ薄暗く
凍りつきそうな空気が立ち込めていた

東の尾根が少し明るくなった
長い稜線が朱色の光で浮かび上がっていく
澄んだ空が見えてきた
振り向くとはるか彼方に
真っ白なアルプスが神々しく映し出されていた

太陽はゆっくり昇ってきた
山の切れ目からまばゆい光が一気に噴き出した
一瞬 強い光に撃たれ何も見えなくなった
その時 私の中にひとつの尊い光が宿った
日の玉はどんどん大きくなって
川面を明るく照らし始めた

世界中にこの光が注がれている

  石段                   中原章予

本部団参 霊園団参と
足をのばして青森へ
主人の足跡たどり
本家は北海道へうつり住み
ただ何となく
主人がねごとにまで言っていた
三戸城へのぼり路
写真に向い
お父さんとうとう来ましたよ
ほら紅葉がきれいねと
つぶやきながらカメラのシャッターを切る
サクサク サクサクと
落ち葉を踏みしめ
四十年前主人と歩いた路
城山への石段を
一歩一歩ふみしめ乍ら登る
何となく主人の声が
聞こえて来るような
ありがとう! ありがとう! と

  いきつく処はここしかない         山本尚男

思いがけない本年三度目の入院生活。非日常的な一ヶ月余り。
仏さまの与えてくださった貴重な時間。
多くの人様のお世話にならなければ生きられない。
自分一人では何もできない非力さ。
感謝してもしきれない。
このご恩返しをどのようにしたらいいのか、していくか。
つくづく反省し考えさせられた。
何がどうあれ最終的に行き着く処は、
開祖さまの処世訓ともいえる法華経の精神以外ないと、感じたのが結論です。

  冬の季節                 山本恵子

夜空の星がきれいだよの声
あら そう 見たい 外に出た
ダイヤモンドを散りばめた
それは見事な夜空だ
心も体もうきうきする

天候悪い日が続き
星の見えない曇り空
しずむ心を動かして
ガラス見つめて白い波

風もしずまり外に出て
まわりに目をくばる
波のしぶきが飛んできて
物干竿に塩の花
お湯で洗い流さなけりゃ使えない

  春よ来い                 山本恵子

立春と名のみ
寒い寒いと人は言う
春はそこまで来てるようだ
春を迎え入れる準備に
我家は我家なりに色々と工夫するのも楽しい
思いきり手足を伸ばして歩ける日々も間近だ