詩誌「詩人散歩」(平成19年夏号)
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  これっきり                浪 宏友

もう これっきり
そう言って別れたはずなのに
今夜も あなたのそばにいる

ときがめぐると潮が満ちるように
私はあなたのもとに打ち寄せられる

大都会の裏町の小さなひととき
かすかなしあわせが欲しくって
黙って あなたに寄り添っている

もう これっきり

決まり文句で歩き出せば
けばけばしい光の向こうに
がらんどうの闇が立ち上がる

ぼろ布のような私が
枯木のように立ちすくんで
振り返れば あなたは もういない

もう これっきり

つぶやきながら見上げる空に
ぼやけた星がひとつだけ
つまらなそうに目をこすっている

  ブランコ                 中原道代

昼下がりの遊園地
満開の桜の下で
幼い姉妹のブランコふたつ
大きく小さく揺れている
背中を押すたびどんどん高く
あの雲めがけて足のばす
お腹の底から笑ってる
桜の枝が大きく揺れて
広場いっぱい花吹雪
二人の髪に舞いかかる

ママにおみやげタンポポ摘んで
綿毛吹き吹き帰る道
私の心も満ちている

  幸福                   山本恵子

運動の帰り道 思わず足を止めながめる
それは美しく咲いた八重桜二本
桜のように可愛い女になりたいと思う
一汗かいて着替え冷水の又うまいこと
世の中には至福を感じるものがいっぱいある
こんなに幸福でいいのだろうか

  ラーメン食すしあわせ             山本恵子

長男夫妻の帰途立ち寄ったラーメン屋
中身がこかった うまかった
見送った後も余韻が残る
みんなで食べたせいだったのか
あと引くあの味思い出し
月に三度は外食し
この世にこんなうまいラーメンあったなんて
しあわせいっぱいの気分になれる
これでしばらく大丈夫