詩誌「詩人散歩」(平成19年冬号)
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  小さな花                  浪 宏友

こんなに小さな地面だけれど
こんなに小さな花だけれど
精一杯に繁茂して
精一杯に咲いている

ここは大通りの脇だから
大きなトラックが轟音あげて通りすぎると
地面が上下に大きくうねる

小さな葉がかすかに揺れたのは
地面が揺れたためなのか
そよ風が通ったためなのか

小さな地面に
日ざしがあたたかく溢れている

ひっきりなしの自動車の群れ
足音忙しく歩きすぎる人々
骨のように立っている街路樹
透き通ることのない都会の空

誰の目にも止まらない
こんなに小さな地面だけれど
こんなに小さな花だけれど
精一杯に繁茂して
精一杯に咲いている

  秋の日ざしの中で             中原道代

河原の石に腰をかけ
川のせせらぎ 鳥のさえずり
浅瀬に小さな魚達
足元見れば蜘蛛や蟻
小石に休む青いかめむし
秋の日ざしを浴びている

草原行けば飛びかうバッタ
コスモス畑に舞う蝶々
私を追い越す二匹のトンボ
秋の日ざしに照らされる

紺碧の空に赤トンボ
人さし指にも止まってた
トンボ追いかけ日が暮れて
家路急いだ幼い日
色鮮やかに蘇る

  明日に向かって              山本恵子

遠くの我が子はどうしてる
仕事仕事 どこにいるかって
出張に続く出張で家にはいないとの事
時々は電話のほしい親心

用事のある時電話する
心配ないとわかっているつもりでも
いつからなったか親バカに

まだまだ年ではないよ若いのだってさ
本当だこれから一年生
一歩一歩あるきはじめた二人づれ
明日に向かって楽しく生きよう

  二人の夢                   大戸恭子

そっと小指をからませながら
夢はかなうと言った人
あなたは今頃浮草暮らし
それでも私待ってます
いつか二人に春が来る日を

そっと口づけしてくれたあと
夢をもとうと言った人
あなたは今頃浮草暮らし
それでも私待ってます
いつか二人に幸が来る日を

そっと体をだきしめながら
夢に生きると言った人
あなたは今頃浮草暮らし
それでも私待ってます
いつか二人が結ばれる日を