詩誌「詩人散歩」(平成20年春号)
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  君の面影                  浪 宏友

風の中に
君の声がかくれている
ほがらかな笑い声が
静けさの底にしずんでゆく

雨の中に
君の足音が混じっている
近づいて来るのか
遠のいていくのか
途切れてはまた聞こえて来る

みぞれの中に
君の悲しみがまぎれ込んでいる
大きな瞳にあふれていた
涙がかすかにきらめいている

雪の中に
君の面影が埋もれてゆく
見渡す限りひといろの世界に
つぶやきがぼんやりと立ち尽くす

  冬晴れ                  中原道代

日差しに誘われ土手行けば
空に突き出す雪の山
澄んだ空に飛行機雲
真上に大きな三日月の虹

この巨大なキャンバスに
自然は自由に美を描く
力強く生き生きと
その営みは永遠に

帰り道
雲も虹も消えていた
薄墨色の大空が次の出番を待っていた
私の中のシャッターが今日の一枚捕えてる

  だるまになろう                大戸恭子

これでもか これでもかと波にあらわれ
丸い角のとれた石が出来あがる

人生もこれでもか これでもかと
波がやって来る
だけどその中で七転八起しながら
私も丸い人間になろう
だるまになろう

そして
仏様とじっとにらめっこをしよう
いつか
仏様が笑ってくれるまで‥‥