詩誌「詩人散歩」(平成20年夏号)
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  眠る きみへ                浪 宏友

きみの声を聞くことは
もう
できなくなってしまったけれど
きみが 何も 語らなくなったわけじゃない
ほら 今だって
小首をかしげながらしきりに言葉を選んでいる

きみのすがたを再び見ることは
もう
できなくなってしまったけれど
きみが 何処にも 居なくなったわけじゃない
何時だって
これまで通り
暖かな思いやりを投げかけてくれる

だから いつものように
笑顔でうなずき合おうよ

だから これまでのように
一緒に幸せになろうよ

いつまでも
いつまでも
一緒に
力強く
歩み続けて行こうよ

(三十五年という短い生涯を走り抜けて去った姪を偲んで)

  春が来た                 中原道代

教室の窓の外
 枝が揺れて桜舞う
 風が吹くたび桜舞う
 少女はうっとり眺めてる

四時間目終りの合図でとび出した
 桜吹雪を両手に受けて
 廻る 廻る クルクル廻る
 広い校庭春乱舞
 吹きだまりの花びらまけば
 身も心も桜色

遠くで先生呼んでいる
 胸いっぱい花びら抱いて
 一目散に駆けて行く
 桜の精は二年生

  季節のつぶやき                大戸恭子

週刊紙
読んで思うは
「ホントかな」
読者の立場
考えてくれ

口びるを
水で冷やして
口づける
夏は冷たい
口づけがいい

玉ねぎの
茶色い皮が
頑張って
なかなかとれぬ
やなテーブルよ

鉛筆を
消しゴム君が
追いかけて
やっと出来たよ
この短歌

似てるから
嫌われてると
いう事を
あの人がする
態度から知る

  わが子の声                  山本恵子

炬燵の上にバラの生花
今は亡き我が子の顔に見えてくる
母ちゃん今帰ったよと
どこからか聞こえたようなそんな気がする
路往くお客の笑声

  足元にも                   山本ルイ子

春になるとさくらがとてもきれい
でも足元にも
たんぽぽ つくし ふきのとう
アリさんたちもせっせと穴堀り
そんな姿に 私は元気をもらった