闇 浪 宏友 |
痩せ衰えた老人 ひとり 右脚を引きずり 前に出し 地面に置く 左脚を引きずり 前に出し 地面に置く 僅かずつ 僅かずつ 進んでいるように見える
朦朧たる老人の奥に
ふたりはいつしか地面を離れ
若者のはずむ声
襤褸をまとった老人 ひとり
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さざんか 中原道代 |
薄化粧の雪の中 今年も咲いた さざんかの花
鳥の影も見当たらず
敷地の隅の枯木の中で
学校帰りの女の子
足元落ちてたひと枝を
さざんかの花
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はぜの実 織田信雄 |
南京はぜの実の白い 淡い陽ざしのふる道は 冬に向う一方通行の道だ
青い空を背景に
今年の夏に見た
今は閑散とした通りにあって
空は青い
陽ざしは
幾度もめぐりきては去っていった夏
あの夏の夜の花火に凝縮されたものを
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夏畑 山本恵子 |
残暑故虫が一面 手も足も延ばすところない 野菜もあわれ姿なり
あなたのおかげで仕事終り
早く食事しますよね
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