あの日 浪 宏友 |
あの日のぼくはそうだったのかもしれない 声がして 振り返ったら 笑顔がはずんでいて そのままつれ立って歩きだして どこを どう歩いたのか 分からないけれど いつしか 虹の中に 溶けてしまった気がする
あの日の虹はまだ消えていないのに
息せき切って話を煌めかせる大きな瞳
虹の下ではぐれてしまってから
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初雪 中原道代 |
夜明け前の静けさの中に 雪をかぶった一本の木 雪明かりに照らされて 真白い枝々が天に伸びている 片隅のこの小さな木 春は風に若葉が揺れ 夏は緑の木陰をつくり 秋は木枯らしに身を任せた 私はいつもその息吹をきいていた 今 冬の美しい姿になって立っている 乳色の空の向こうから 強い光が差し込んで あの 白い枝々が千手になった
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階段 大場 惑 |
階段をのぼりつめれば また階段がでてくる また階段をのぼりつめれば またまた階段がでてくる またまた階段をのぼりつめれば またまたまた階段がでてくる
これまでに
けれどもこの階段をのぼらなければ
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望むもの 伊藤一路 |
何が欲しいか言ってみな 考えていたって手に入らないよ 何がしたいか言ってみな そこから夢が始まるよ
何が悪いか言ってみな
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厄年 山本ルイ子 |
先日、厄払いに行ってきました。 気持がスッキリしました。 けれど、三十代は厄だらけ そして、三十代は今まで育てた苗に どれだけ実ができるか大事な時。
日々、前進!
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いちご 山本恵子 |
今年初めて 主人が買ってくれた いちご植 ハッポ箱に植えかえて 大きくなって 実がついて
カヤかけすんで安心したら
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鉛筆 山本恵子 |
久しぶり 鉛筆手にとり 昼食後 貴方が病院から 帰って ホッとしたひとりぼっち
夕方まで 安心して眠ってね
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蓮の花 大戸恭子 |
泥沼から 花芽を出す花よ 凛として咲く花よ その花の名は蓮 泥の中でしか育たない花 けれど、あだ花はなく 花のうてなには今日も仏が宿る 沼をわたる風が 時おり花をくすぐるから 花は可愛く笑うのだ そしてこう言う 「妙法蓮華 私の様に生きなさい。
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夫婦喧嘩 織田信雄 |
自我にしがみつく けっして自我は捨てられない だから互いにいがみ合う
負けるもんかと意地になる
声が次第に大きくなる
中途半端な終わり方はいやだ
何故かそうならないうちに終わる
互いのことを真剣に考える
心の隅にささった
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