詩誌「詩人散歩」(平成13年夏号)
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  捜 す                 浪 宏友
見知らぬ君に子供を産ませて
ぼくは遠くに立ち去ってしまった

ぼく自身でさえも捜すことのできない遠いどこかへ
行方不明になってしまったぼくを捜して
君はぼくをさまよいはじめた

ぼくは君を黙ってみつめながら
朽木のように
君の足もとに横たわっている

鋭い赤子の泣き声が
ぼくを散り散りにして吹き飛ばし
甲斐甲斐しく赤子をあやす君のふくよかな肌が
ぼくを静かに沈殿させる

ぼくは知らぬ間に君の空気となって
君に発見されることなく沈黙していた

君はぼくを捜すことをやめないけれど
ぼくはついに姿を現すことがないだろう

  宇宙時間                 浪 宏友
連絡がこなくなってから
いくつもの宇宙時間が過ぎていった

毎日 郵便受けを見るけれど
たまに木の葉が入っているだけ

毎日 電話の前に座っているけれど
呼び出し音は一度も鳴らない

果たせなかった約束を果たしたいから
いつまでも待っているけれど

今度も宇宙はしぼみ始めて
やがて深い眠りにおちてしまう

次のビッグバンまでは
何の音沙汰も得られない

  無題                山本恵子
希望に胸をふくらませ
輝く瞳をみつけたら
静かな夜の星一つ

夢を見てこの世に
花を咲かせたら
浮かぶ息子の顔形

生きて逢えねど夢で逢う
話は幼子あどけなさ
涙流して語って一夜

あの日あの夜過ぎ去って
ホームシックの夜だった
心の支えで生きた時

今が人生花咲かせ
二度ない命をたゆみなく
生かされ今日も歩みゆく

咲かせたい愛もあり
咲かない愛もある
散る愛もあり
美しく萌える愛

不思議だよ愛って
言葉で語るのできない
素晴らしい花だったかな
青春の一ぺえじみたい

誰でも通り抜ける道
でも人によって違うかな
萌える心は人さまざま
本当か嘘でないよきっと