閃 光 浪 宏友 |
閃光が あなたを 浮き上がらせてくれた すぐに 闇
夢だったのだろうか
現だったとしても
再び閃光が闇を切り裂いて
遠い雷鳴が遠ざかる
それでも ぼくは
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言霊 中原道代 |
私は遠い記憶を辿っている 彼女は病室の隅に静かに正座していた あいさつすると「そうね」 具合を聴くと「そうね」 いつもやさしく「そうね」が返ってきた 覚えているただひとつの言葉 「そうね」
今 言霊となって
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二人の間 大戸恭子 |
深緑の中、 2台の自転車は 風をきって近くのスーパーへ急ぐ 駐輪場は、いっぱい。 しかたなく離れて自転車をとめる
袋をいっぱいにして
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湯に浸かって 織田信雄 |
風呂の湯に足が見える 十本の指が健在である 砂利道やアスファルト 半世紀を歩いてきた足 どう称えればよいのか
十本の指先に父母の顔が見える
十本の指先のさらに先に見える
何と応えればいいのか
あなた、まだなの
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