詩誌「詩人散歩」(平成23年春号)

yuyake
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  苦悩                    浪 宏友

ほのかに明るみ始めた空
稜線の下に漆黒の闇が立ち込める

闇の奥
静けさの沼に
いくつもの屋根が沈んでいる

何もかも振り捨てて歩き始めれば
突然 背後から
甲高い叫びが体を貫く
思わず振り返ったまなこに
一瞬の閃光が突き刺さる

まぶしさを拒んで背を向ければ
行く手はたちまち溶解し
暗黒が激しくのたうちまわり
粉々に砕け散る灰黒色の大地が
何の気配も見せずに息をひそめている

歩みを失って立ち尽くせば
水のように 光のように
叫び声の切れ端が足元に絡みつき
暗がりの底から
屋根がおぼろに浮かび上がる

  大雪                    中原道代

降り積もる雪
黙々と雪をかく
木の根元に
垣根の上に
雪の山が高くなる
雪に埋もれた土の中
福寿草も 水仙も
根雪解けを待ちながら
春の支度するだろう
その日に向かって着々と
私も身支度整えよう
雪押す手に力がこもる
後ろであなたがつぶやいた
「ゆっくり ゆっくり」
雪山に 新しい雪降り積もる

  明日も君と……                大戸恭子

よく目を開いて 見つめてみよう
僕らの未来を 僕らの夢を

この人生が永遠に続かないなら
今を大切に生きてゆこうよ

自分の立場にこだわるのなら
相手の事を先に考えればいい

僕が自由を愛する様に
君も孤独になりたい時があるね

だれもが生きていかなくてはならないなら
君がしっかりしないと
僕もくじけそうだよ

今日は 今日は ありがとう
このぬくもりで 明日もやって来るね

   早朝                    山本恵子

真赤に燃えた太陽だから
励まされて畠に通う二人づれ
草取り楽しく涼しいうちに

朝日が昇る時までに
会話しながら手作業で
何時に帰る予定組む

明日もあるから無理せずに
今日の朝食おいしいよ
家路に向かう車道

   運命                   山本ルイ子

運命を信じますか?
私は信じます。
今日、双子座がハッピーな日第一位だった事、
目の前の公園の古本市が毎年雨にあたる事、
すべて運命だと思う。

良い事、悪い事、悲しい事、嬉しい事、
すべてがずっと昔から決まっているのかもしれない。
そして彼女の死が近づいていた事も。

私はいつか星になる。
運命の中で、どれだけ後悔のない人生を送れるか、
それは、どれだけ一日を大事にするかだと思う。

彼女は、幸せな人生を送れたであろうか。
いや、きっとこれからが楽しい人生だと
笑っているのかもしれない。

  インストール                 伊藤一路

自分に飽きてきた
同じ発想、同じ行動、同じ台詞
パソコンと同様に
そろそろ新しいソフトをインストールしないと
利用者にも飽きられる・・・

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ハードディスクの容量は空きだらけ・・・・・
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