迷路 浪 宏友 |
気づいたら ぼくは きみの中にまぎれ込んでいた 出ることもならず どこにいるのかも分からず きみに出会うことすらできなかった
気づいたら ぼくの中に
ぼくはきみに出会いたくて
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月明かり 中原道代 |
大きな月が 朝顔の葉を照らしている 昔 銭湯の帰りに見た丸い月 店のとばりは下ろされて 家の灯も 消えていく 母と二人 黙って歩いた月明かりの道 幼ない私のひとこまが 光の中に見え隠れ 今宵は月を招き入れ 母の想い出 手繰りましょう
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ド根性ガエルのピョン吉様 大戸恭子 |
奥さんのしりにひかれて ペチャンコになった僕 それでも奥さんのTシャツに アイロンプリントしてもらったぜ 奥さんの胸がゆれる 僕もゆれる たまに さわると ピシャッと平手打ち そして洗濯機の中 目がまわる それでも僕はド根性ガエル 照りつく太陽の下 生きかえるのさ オレは天下のピョン吉様だ!
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生きるということ 織田信雄 |
苦しくなくってなんなのだ 人もまた苦しいのだ だから思いやりがある それは自分の苦しさであり 人の苦しさである 苦しくっても 生きることから逃れることはできない ただ苦しみを受け入れるしかない そして今をかみしめる 自分をかみしめる 潮騒がきこえる 鳥のさえずりがきこえる 自分は生かされている そして人を思いやる 苦しいことも 楽しいことも 哀しいことも 嬉しいことも 私たちは選ぶことができない だが生きることはできる そうやって 私たちは生きている 私のなかの苦しみは特別ではない 私のなかの喜びと同じく
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墓参り 山本恵子 |
さりし日の顔美しく 心にやきついて 墓に通う 今日 昨日 海辺の道に足はこび 潮風にのり あんたとよべど返事なき
流れる涙が胸をしめ
楽しい人生 ありがとう
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自分 山本ルイ子 |
音楽が好きな人 料理が好きな人 芝居が好きな人 たくさん好きなことがある
にんじんが好き
背の高い人が好き
誰にもお父さんお母さんがいる
誰かと比べるのではなく
そして自分らしく居ることが
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寝る前の儀式 伊藤一路 |
夜寝る時は必ず背中を掻く 三歳の息子の儀式だ 蚊に刺された訳でもなく 赤く腫れている訳でもないのに 毎日掻いてくれとせがむのだ
寝る前の儀式の話を田舎のおふくろに話したら
おふくろも今の私と同じような気持ちで
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