昼間の月へ 浪 宏友 |
迷子になっちまったのかい お月さん 真っ青な空に 白く ポツンと 消しゴムで消されそうに佇んでいる
置いてけぼりを喰っちまったのかい お月さん
大事なものを落としちゃったのかい お月さん
ふと気づいたら誰もいない
明るすぎる昼間は
小さな星たちの瞬きの中で
|
吾亦紅 中原道代 |
秋風にさそわれて 田舎道を歩いた 赤い りんご 赤い ざくろ 赤い もみじ 赤い けいとう 赤色を 沢山 見つけた 私の好きな われもこうは 山の風に 揺れているだろう 「吾も紅」と 昔 友が教えてくれた すっかり秋色の景色の中 コスモスの道をどんどん歩いて行く 垣根越しに植木屋さんが冬支度 今 目の前を 赤トンボが横切った
|
足音 丸山全友 |
五歳の娘は 私や妻のはきものをはいては 大きな足音をさせている
足音が聞こえている間は
突然聞こえなくなると
|
節分行事 山本恵子 |
節分の笑顔友と遊び 今日一日も昼食も 集まり数も八人かな 笑う門に福の神
今度又多くきてくれる
心がうきうきすると
|
十年間そして十年後 山本ルイ子 |
早いものでPEPができて十年が経ちます 子どもに譬えると小学四年生 物事もしっかり考えられる年頃だ
はたして私はどうだろう
怖いくらい年齢と人間性は比例しない
どう生きてきたかはもう変えられない
十年後
[PEP(ぺップ)は作者が勤める東京池袋にある美容室]
|
言葉 伊藤一路 |
言葉は何の為にありますか 人を喜ばせる為ですか人を傷つける為ですか 言葉が無ければ何も伝わりませんか 赤ちゃんは言葉がありませんが伝わります こちらが分かろうとするからです 分かり合える距離にいるからです 分かってもらおうと必死だからです 大人同士だと言葉だけに頼りすぎて 大人同士だと言葉だけに囚われすぎて 本当の事が伝わらない 相手を分かろうとするだけで言葉なんかいらなくなる 心地よいコミュニケーションが この世から無くなる前に この事を伝えたい 必要最低限の言葉だけで
|
四季のつぶやき 大戸恭子 |
見た目には爬虫類を思わせて 食してみれば珍味なゴーヤ
涙して貴方の胸で泣く夢は
街行けば風が冷たく空見上げ
秋花(コスモス)の上に乗ってるみつばちの
ありがとうその一言も言えなくて
さようならその一言もかわせずに
|
おかさん おとさん 中野典子 |
おかさん あなたにあいたい おとさん あなたの姿が目に浮かぶ 目をとじればあえるね おとさんは おかさんは とおくへいっちゃった
|
ねこ 中野典子 |
あなたの目は真実 いつも私を信じ愛し慕ってくれている 今日も私をジッとみつめる 死ぬまで一緒にいるよと約束をした ありがとう愛しき小さな生きものよ
|
昔の恋 大場 惑 |
遠い昔 恋をした あの人の姿を見ると 胸が鳴った あの人の近くでは 声が出なかった あの人が居るだけで 幸せだった けれど 物悲しかった
あの人は 居なくなった
にじみのように
|