詩誌「詩人散歩」(平成26年夏号)

yuyake
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  悲しみ                        浪 宏友

こみあげてくる悲しみ
身体を破り
激流となって
四方にあふれだし
飛沫をあげ
なにもかも引き裂き
どこまでも
どこまでも
行方定まらぬまま広がりゆく

町を歩けば
電車は轟き
自動車は止まり
犬は植え込みでおびえている
建物はそそり建ち
空は固まり
道行く人影は
陽炎よりも淡く
風景は崩壊し
光が無数の針となって降り注ぐ

突き上げてくる悲しみ
黒く 鈍く 重く
五体にからみつき
世界はどこまでも 深く 暗い

  東風                    中原道代

河川敷に春風が吹いていた
つくし摘む少女の髪が揺れている
川辺で遊ぶ若人の笑い声が風に乗る
ボールを蹴る少年たち
駆け回る幼な子
散歩する親子
みんなみんな伸びやかだ
ラケットにぎる貴女の笑顔も光ってる
私も負けじとラケット振れば
風がボールを舞い上げる
ふたりの足は右往左往するばかり
走り疲れて少し休けい
子供がさし出すお茶飲めば
体の奥にしみ渡る
春をいっぱい吸い込んだ
グランドに人影まばらになった頃
太陽が西のお山に落ちていく
風に押されて さあ 帰ろう
垣根越し
マレットゴルフのおじさんが
ねらいをつけて
ホールイン!

  花                        大場 惑

忘れ去られた野
見捨てられた道の傍らに
そっと芽生えて
静かに咲き
誰の目にも触れず
ただ 風に揺れ
やがてしぼみ
消える
忘れ去られた野
見捨てられた道の傍らに

   ジョニーのお母さん             大戸恭子

さざ波を越えてゆく
波のりの上手いジョニー
お母さんが教えたのさ
波のりの上手いジョニー
あの娘(こ)を口説いていた
その手口の上手いジョニー
お母さんが教えたのさ
その手口の上手いジョニー

きっと、誰もが好きな
お母さん、
夏を知ってる
ジョニーのお母さん。

   遠いのに近い               山本ルイ子

急に声が聞きたくて電話をかける
懐かしい声が心地よい
元気だった?
仕事はどう?
風邪は引いてない?
たわいもない会話が弾む

ではまたねと、電話を切った
さっきまで遠くにいた人が隣にいるかのように感じたのに
切れた途端また遠くなってしまった
でも大丈夫
また声が聞きたくなったら電話をするから
あなたの声に元気をもらうために
あなたを近くに感じるために

  一流                     伊藤一路

どの世界にもプロがいる
その中にさらに一流といわれる人がいる
ある日、ネットで卓球の試合を見た
世界大会であろう国を代表する
選手同士の真剣な試合だった
レベルの高い激しい試合だった
後半汗だくの二人を見ていてある事に気付いた
二人とも笑顔なのだ
この真剣勝負の中笑っているのだ
それに気付いた観客も皆笑顔になっていた
あまりにも技術のレベルが二人とも高過ぎて
勝負というものを超えてしまっているように見えた
一流とはお互いに勝ち負けのレベルを超えて楽しみ
それを観ている人達まで笑顔にしてしまうこと
真剣勝負のその先に皆の笑顔と感動が生まれたら
それは一流の証なのだと・・・
一流って凄いな

  作品                     清水俊平

  地獄
怒ると物を作らず物壊す

  退屈
苦しくても耐えれば物を成すを得る

  諸行無常
ものが来てそして去るのがこの世界