詩誌「詩人散歩」(平成26年秋号)

yuyake
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  少女                         浪 宏友

夕闇の河原
ひとり うずくまって
  花を摘む 少女

茜色の川面
対岸に
街の灯が点りはじめる

少女は ふと 手を止めて
視線を向ける遠方には
四角い建物が白く沈んでいる

少女は小さくため息をついて
再び花を摘み始める

河原には風もなく
少女の片手には
白 黄色 紫色の花が握られている

やがて少女は立ち上がり
夕闇に花のように咲いて
遠い建物に顔を向ける

闇が深まり
少女を隠しはじめるころ

涼風が思い出したように川面を行きすぎ
対岸の街の灯が
ふいに明るくかがやきはじめた

  野の花のブーケ               中原道代

中学生の女の子
手に一杯の花束
「はい おみやげ」と持って来た
色とりどりの夏の野の花
学校帰りに川原に下りて
陽の落ちるまで摘んでいた

花の中の女の子
時をすっかり忘れてる
きっと いい顔してるだろう

「こんなに遅くまで 心配してたんだよ」と 私が言う
「夕暮れに花を摘む乙女なんて いいね」と 彼が言う
ふたりの話 聞いてか聞かずか
彼女はひたすら花を活けている

   夜の海                   大戸恭子

窓辺に向かって
見る海は
波も荒い夜の海
空を見上げりゃ
白い月
今にも雲に消されそう

旅を続けて
幾年か
古里忘れ 母忘れ
愛しあの娘の
顔さえも
波に消えたり浮かんだり

   友                    山本ルイ子

友達とは色々な形がある
どこかに一緒に出かける友
日々一緒に汗を流す職場の友
心の中の全部を見せれる友
私にとってみんな大事な人たち

今、友が病と闘っている
痛くて辛くてどうしようもできなくて
私には何もできない
けど、みんなと力を合わせて大切なあなたの場所を守りたい
あなたが元気になれる場所だから

大好きな仲間と待ってる。

  積み重ね                   伊藤一路

最近はこう考える
忍耐とか我慢とか努力の積み重ねの先に
幸せや成功があるのだろうか?
今の自分に満足できず我慢や努力を積み重ねる事で
生まれるものが成功や幸せなのだろうか?
今を満足できてない自分に
本当の感謝の気持ちなど生まれるのであろうか?
幸せや成功は今の自分を全て受け入れて肯定し
感謝できてこそ成り立つように思う
我慢の積み重ねの先にあるのは爆発で
今を感謝して楽しむ積み重ねの先に幸せや成功がある
過去を思い腹をたてたり
未来を考えて不安になるくらいなら
今に感謝して楽しんだ方が正しいはずだ
その積み重ねの先に幸せはきっとある

  あやしき人                 河野裕子

少し笑うことができた私は
夜の桜ヶ丘の町を
三部経一冊たずさえ
タモリみたいな「視力が良くなる」黒いサングラスをかけてくふっとほほえみ
夜の散歩をするのだ。