縁側から 浪 宏友 |
おじいさんは 縁側から ふいに 静かに 立ち上がって ぼくたちを見やりながら 奥の部屋に歩いて行きました
ぼくたちの話を聞いているのかいないのか
ぼくが いらいらしていたとき
ぼくが 口惜しい思いで押し黙っていたとき
ぼくが 自慢話をしていたとき
おじいさんが
でも
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秋の恵み 中原道代 |
公園のやまぼうしの木の下で 両手いっぱい赤い実拾った 川原で袋いっぱいくるみを拾い やぶに入って菊芋を掘る うれしい秋の収穫だ 帰り道 ミントの香りを楽しんだ
「ただいまー」「お腹すいたー」
静かになった部屋
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父と娘 大戸恭子 |
父親は娘に理想の女性の スパイスをかけた。 娘のDNAには、父親の様な 男性には、だまされないぞという ガードがされる。 でも結局、 恋愛のシュミレーションは スパイスをかけられた DNAからしか、できなくて、 父親に似た男性を選んでしまうのだ。
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寂しくなる季節 山本ルイ子 |
寒くなると何故か寂しく思う 陽も短くなり一日が早いような
公園を眺めていると、歩く人、誰かを待っている人、みんな寂しそうに見える
そんな寂しい季節だからこそ幸せを感じる瞬間もある
だから寒い季節も嫌じゃないかな
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良い子 伊藤一路 |
良い子ってどんな子? 元気で明るくて優しい子? お片づけができて約束を守る子? 親や先生の言う事を良く聞く子?
本当の良い子って言うのは子供らしい子だと思う
子供はそれでいい
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思い込み 丸山全友 |
妻と稲刈りをする 疲れたので 機械を止めて腰を伸ばす わが家がすぐ前にある 二階の娘の部屋の窓に てるてる坊主がつられている 「運動会はいつだった…」 「運動会は春になったでしょ。あれは遠足があるからよ」
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上野動物園 中野典子 |
両親と出かけたたった一つの遠い思い出 父が私の左手 母が右手を握って 歩きながら 両親は高く手を上げる 三歳の私は 一時 宙を舞う たのしくて うれしくて もっともっとと せがむ私 母は腰が悪くて十回位しかできない 分かってる 無理は言わない 最初で最後のセピア色の思い出 今度は上野動物園へ行こうねと私 約束は叶わなかった もう一度だけ逢うことが出来たら 両親の大好きな旅行へ車で連れていってあげたい おとうさん おかあさん ありがとう 命を
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