詩誌「詩人散歩」(平成27年夏号)

yuyake
◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  荒れ野                        浪 宏友

照り返す陽光
焼け付く大地
果てしなき荒れ野

一粒の種 乾いた地に落ちて
根が大地を探り当てると
芽をもたげ
茎を伸ばし
葉を広げ
やがて 淡い花がひらく

獣も通らず
虫の羽音も聞こえず
鳥は遥か上空を行く

花を 葉を
千切り去ろうと風が吹き荒ぶ
花は 葉は 石くれにしがみつき
辛うじて耐える

果てしなき荒れ野
照り返す陽光
雨雲は遠い

  春は黄色                  中原道代

菜の花 たんぽぽ チューリップ
ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ
黄色い蝶が舞っている
どの花に止まる
羽根に秘めた模様見たさに目をこらす
あまりのはやさにその一瞬がかなわない
花にまぎれて見えなくなった

どこかで子供の声がする
土手をゆっくり登ったら
黄色い帽子の一年生
桜舞う木の下で
ボールを蹴ってはしゃいでいる
春の黄色は元気色
朗らかに笑う子らの声聞いて
友のことば思い出す
『子供の声が聞きたくて窓を開けるの」
おだやかな顔がよみがえる

   私の一日                 山本ルイ子

「まだ眠い」
そう思いながらカーテンをあけた
太陽の光が眩しくてようやく目もあいた

朝はニュースを見て一日の出来事を把握する
夜はなるべく暗い気持ちになりたくないからだ

そして満員電車に乗って仕事に向かう
みんな急ぎ足で右往左往している
それをみているといつも思う
日本人は働きすぎだと
だから時間にも追われてしまう

ようやく仕事も終え家に帰宅する
それからお布団に入るまでがとても幸せな時間だ

明日もカーテンを開けたとき眩しいと思える一日になってほしい

  自分で決めた                 伊藤一路

好きな事しかしなければストレスはないかもしれない
好きな事だけしかしなければ上手くまわらずそれが
ストレスになるかもしれない
好きな事の為にする好きじゃない事はストレスがない
自分の意志ですると誰の為でもなく誰のせいでもなくなる
自分で決めた事となればスムーズに動き上手くいく
結局自分で決めた事なんだ
自分で決める事なんだ
そして決めたんだ

  布(絆)               大戸恭子

二本の細い糸が
風で運ばれて来た

風に紡がれ
光に染められ
布が出来上がった

温かく二人を包む布
今までも、これからも
育んでいく絆

  雨坊主                    河野裕子

ビニールがさが すべり台
するするするする すべり落ち
雨粒坊主が 並んだ 並んだ

たくさん ならんだ 雨坊主
ぎっしり たくさん 雨坊主

あっ

ひとつ落ちてゆく

あっ

もひとつ落ちてゆく

雨だれになって
さようなら さようなら
元気に 元気に さようなら