詩誌「詩人散歩」(平成29年春号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  靴音                         浪 宏友

足早の靴音に目を上げると
颯爽と近づいてくる女
黒ずくめの服にハイヒール
ぼんやり歩くぼくの傍らを
快活に行き過ぎる

すれちがった時に気が付いた
あの女だ

慌てて振り返ると
老婆がひとり
ノロノロと
背中をゆすりながら歩いて行く

見渡せば
空っぽの街路

ふいに闇が押し寄せてきて
老婆の背中が見えなくなる

ひとり残されたぼくの耳に
ハイヒールの音が快活に響き
足早に遠ざかって行った

  帰る日                   中原道代

朝 居間のカーテンをそっと開ける
子供はもう起きている気配
ふすまを開けて「こんばんはー!」
覚えたてのこんばんはをくり返す
可愛くて おかしくて
私も一緒に「こんばんはー」

ママをゆっくり眠らせて
朝ごはん食べようね
いただきますと手を合わせ
上手にスプーン使います
二歳のきみはいつだって
「おいしいわー」と言いながら
残さず食べてくれるんだ

一日があっという間にすぎていく
お風呂でママがアンパンマン歌ってる
きれいな声だなあ

今日は帰って行く日
静かになった玄関に
ママが言った「ありがとう」の余韻
まだはっきり残っている

   もうすぐ---                山本ルイ子

まだまだ厳しい寒さを感じながら
お腹もだいぶ大きくなり、坂道の登りに息をきらしながらゆっくりと登りきる

お腹のなかでますます激しく動く我が子
もうすぐ会える
桜が咲くころかな 散ってるころかな

あなたが最初に見る(感じる)景色はどんなかなぁ

その景色、三人で一緒にみようね

  本音                     伊藤一路

本音で生きる
なぜ本音で生きていないのか
なぜ本音を隠すのか
皆んなに嫌われたくないから?
皆んなを怒らせたくないから?
皆んなにいい子で居たいから?
皆んなに尊敬されたいから?
皆んなに好かれたいから?
全部逆だな
本音で生きた方が思いは がる
薄っぺらだった
浅かった
本当に がるってどういう事か
子供と接していると子供の態度でよく分かる
だって子供はいつも本音で生きてるもんな
やっぱり子供は凄いや