お帰り 浪 宏友 |
その人影は ふらついていた 疲れ果てていた こちらに向かって歩いていた
見覚えのある影だった
きみだった
あのときのきみは 輝いていた
そのきみが 帰ってきた
きみはようやく顔を上げ
冷え切ったきみを抱き止めて
お帰りっ!
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虫の声 中原道代 |
朝 ベランダの外に出た あたりはまだ静まりかえっている 緑のカーテンから朝顔が顔を出している よし! と 自分に気合を入れた その時 虫を発見 壁をゆっくりと登って行く 白黒のまだら模様がきれい 私の手が もう 虫をつかまえた 指先で虫が鳴いた かすかに鳴いた 音のない空間に その声がはっきり響いた ごめんねと言いながら びんにいれて調べたら カミキリムシの仲間だった 幼な子がやって来て しばらく虫をながめてた さあ にがしてあげよう ふたを開けたらパッと飛び去った 子供は目を丸くして大はしゃぎ 私の体がほぐれた からっぽのびんがぽつんと残った あの虫は 今 どうしているだろう 虫と私 いっ時の出会い 小さいけれど はっきりした声を 思い出している
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破 壊 大場 惑 |
見よ 廃墟と化した街路を 窓は飛び 壁は崩れ 鉄筋は折れ曲がり 道路はめくれ 瓦礫が散乱する
いのちのぬくもりは
戦闘服姿の人影が 自動小銃を携えて
もっとも壊れているのは
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美しいもの 伊藤一路 |
世の中は美しいもので溢れている 美しいものはなぜ美しいのか それは自然が教えてくれた
自然界に存在する全てのものが役割を持ち
人もきっとそうだろう
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