ひとときのやすらぎ 浪 宏友 |
ここにいればいい なんの心配もいらない
きみがどこから逃げてきたのか知らないけれど
ただ きみが
すがりつくまなざしで ぼくを見あげて
いつのまにか ぼくの胸で
ここにいればいい
目ざめたら きみは ぼくから離れて
ほんのひとときのやすらぎのために
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春がいっぱい 中原道代 |
八百屋さんの店先は 今 里山の春の息吹にあふれている うどに菜花 たらの芽 ぜんまい 小さなのびるもみずみずしい
帰り道にも春がある
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徒歩 伊藤一路 |
最近は徒歩が楽しい いつもなら車で行く場所も徒歩で行く 徒歩での移動は情報量が桁外れに多い 咲いている花 実をつける植物 新しい建物 古くからある家 すれ違う人 公園で遊んでいる子供達 細い抜け道 流れる川の水 気温や湿度 舗装や砂利道 車では感じない事ばかり あっという間に時間がなくなってしまうけれど それだけの価値はある 目的と同時に過程も楽しい 効率と結果最優先の発想を 少し考え直してみるのも面白い
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吹き抜ける風 大場 惑 |
熱い痛みを背中に感じながら 両手両脚で這いつくばり 顔を起こしてまわりを見れば 死の灰をかぶった数知れぬ背中が ずっと向こうまでひしめいている
死の灰は
だれひとり
六千五百五十万年前の悲劇は
いまの地上のこの不幸は
だれひとり
地上は やがて 静まりかえり
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