詩誌「詩人散歩」(平成30年秋号)

yuyake

◆これまでの【詩編】を掲載しています。

  起きなよ             浪 宏友

そろそろ 起きなよ
とっくに 日は昇ってるぜ
きみには まだ 真夜中なのかい
そんなこと言ってたら たちまち日が落ちて
本当に 真夜中になっちまうぜ

そろそろ 起きなよ
きみは 恐ろしい夢ばかり見てるんじゃないのか
ずっと うなされっぱなしじゃないか
汗びっしょりになって
カビだらけキノコだらけの布団にもぐりこんで
いつまでもがいているんだい

そろそろ 起きなよ
太陽の光が いっぱいだぜ
明るくって 気持ちがいいぜ

苔の生えた分厚いカーテンを取り払って
たてつけの悪い窓をこじあけて
流れ込む空気を吸ってごらんよ
こんなに すがすがしくて
こんなに おいしい空気だよ

固くて 重たい 古びた布団を押しのけて
そろそろ 起きなよ
すっごく 気持ちがいいと思うよ

  わすれ草             中原道代

川辺を歩くのは久しぶり
樹木が大きくふくらんで
すっかり夏の景色になっている
ゆっくり歩く私を
若者たちが追い抜いて行く
やわらかな木もれ日の小道に入った
薄暗いやぶの中に
ひと株のわすれ草を見つけた
やさしいだいだい色の八重の花
まわりをほんのり照らして
ひっそりと咲いている
今年も会えた!
私の好きな花

私はまた歩き出す
ゆっくりだけど
さっきより
心があたたかくなっている

  気付き            伊藤一路

人が自ら行動するとき
それは気付いている証拠
気付かない事には動けない
言われてしぶしぶ動くようでは
気付いていない
人は嫌いなことでも辛いことでも
気付けば行動できる

親としてやるべきことは
やらせることではない
気付かせること
どうやって気付かせるか
それが親の仕事

今俺が気付かなきゃいけないことは
何だろう・・・          

  うしろへ            大場 惑

顔は前を向いていて
前に歩いてるんですけれど
どんどん どんどん
うしろに下がっているんです

うしろへ うしろへ
遠ざかっていくんですけれど
前に歩いているんです

大声で
呼びかけるんですけれど
呼んでも 呼んでも
振り向きもしないんです

どんどん どんどん
うしろに遠ざかりながら

それでも前に進んでいると
本人は
本気で思ってるんでしょうか